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そうこうしている間に下駄箱に着く。
外に目をやると、黒い衣の範囲が広くなっていた。
「いつも俺にそう言っているが…逆にお前はどうなんだ?」
「へ?」
「ゆめも恋人はいないだろう。」
「…私はいーの、必要ないもん。」
履き慣れたスニーカーを下駄箱から出す。
それを床にぽい、と投げ捨てるように置いた。
「イタチは人気者だから彼女作っちゃえば落ち着くかなーって思ったんだよ。」
「ゆめも作れば去年のようなことは起こらない。」
「今はもう大丈夫だよ、飛段もいるしイタチもいるしさ。」
トントン、とつま先を床で叩いてスニーカーを履く。
イタチはローファーなのでゆめが靴を履き終えるまで待っていた。
「そうは言っても…やはり、」
「心配性だなもー。」
飛段といい、意外と心配性な2人に苦笑する。
昇降口を抜けて門へと並んで歩きだす。
「それよりもさ、来週飛段がバスケ部の試合あるっていうから見に行こうよ!イタチも生徒会の仕事ばっかやってると気が滅入るだろうし、ね!」
「飛段は怪我したから出ないんじゃないか?」
「あいつなら2、3日で治るって。」
「そんなことある訳がー…、」
イタチの言葉はそこで途切れた。
視線が真っ直ぐ前を向いていたのでゆめもそれに習い、前を向く。
思わず目を見開いた。
「…遅ェよバカ。」
校門付近に寄りかかり、不機嫌そうに吐き捨てるサソリがそこにいた。
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