1/2 『我愛羅様。』 『ナマエ…ナマエ、おれは、』 『私は大丈夫です。落ち着いて下さい。』 『…ナマエ、おれはまたお前を…、』 『これくらいかすり傷ですよ、なんの問題ありません。だからそんなに泣かないで下さい。』 カタカタと震える小さい子供。 私はそんな彼に優しく微笑みかける。 『ああ、もうそろそろ夕食の時間ですね…我愛羅様、今晩はなにが食べたいですか?』 『……………なんでもいい…ナマエが作るものは……なんでも美味いから…。』 『おや…ふふふ、我愛羅様はお世辞がお上手ですねェ。』 『お、お世辞なんかじゃないぞ、本当にそう思ってる。』 『ええ、ありがとうございます。』 少し必死に訴えてくる彼が可愛くて仕方ない。 世間では尾獣の守鶴を宿しているためひどい扱いをされているが…本当はこんなにも素直で子供らしいのだ。 私だけが知っている、本当の彼。 それには少なからず優越感を感じている。 彼の父親も、ご兄弟も知らないことだ。 『ナマエ…。』 『はい、なんでしょう。』 不安気に見上げてくる我愛羅様。 彼以上に優しい子供を私は知らない。 『本当に、痛くないか…?血が、止まってない…。』 『ふふ、私が血の気が多いだけでなんの問題もありませんよ。』 『そうなのか?』 『我愛羅様は心配性ですね。』 いつだって私のようなただの世話人を気遣ってくれる。 誤って傷つけてしまったときは、半べそをかきながら謝罪する。 食事のときなんか作ったものに文句を一言も言わず、たとえ苦手なものがあったとしても残さずきれいに食べてくれる。 普通の子供よりも偉いと思う。 『ナマエは…、その、あの…、』 『我愛羅様?』 『…なんで、皆はおれを嫌うのに…お前は離れないでいてくれるんだ……?』 …これが子供の問うことなのだろうか。 その事実に胸を痛めながらもにこりと微笑んで優しく答えた。 『我愛羅様を愛しているからですよ。』 あなたを、愛しているから。 夜叉丸様に裏切られたと鬱ぎこんでしまって、 加琉羅様に愛されていないと勘違いをして、 そんな彼を変えたいと、誤解を解きたいとは思うけど… もう…私の言葉で変えられる程の浅い傷ではないから。 『ナマエ。』 彼が私の手をきゅ、と握る。 『なんでしょう、我愛羅様。』 そんな彼の小さな手を握り返す。 『…お、おれも、お前のことだけは…あ、愛して、る。』 紅色に染められた頬でそう言われてしまえば 『………それは、光栄です。』 そう返して、笑いかけることしかできなかった。 [*前] [次#] |