1/1 「ねー飛段ー。」 「んあー?」 気の抜けたナマエの声に飛段も気の抜けた声で返事をする。 「任務はどうしたの?」 「おれは休み。」 「角都は?」 「知らねー単独任務?」 「疑問形とか。仮にもパートナーなんだから把握しときなって。」 笑うナマエに飛段は不機嫌になる。 「今は角都なんかいーだろォ、ナマエと2人っきりなんだからよォ!」 寝そべっていた飛段ががばっと起きて、ナマエを見つめた。 その顔は小さな子供のようで。 「今は…今だけはおれだけを見てろよ。」 「…っぶはっ!!ひ、飛段はっずかしー!!でもセリフは超イケメン!あははは!!」 「わ、笑ってんじゃねーよ!!」 「ごめんごめん、あまりにも似合わなさ過ぎ、て…ぶふっ、うくくく…!」 「このやろー笑い過ぎだ!!」 顔を真っ赤にさせた飛段は、笑い続けているナマエに襲いかかった。 「うわっ!…っあっははははは!!ちょ、バカやめてって!」 「うっせー!喰らえくすぐりの刑!!」 「ひゃはははは!!ふ、腹筋崩壊するからやめ、ははははは!」 2人して笑い転げた。 S級犯罪者には到底見えないだろう。 一通りくすぐって気が済んだのか飛段は手を止めて、畳の上に再び寝転がった。 「ゲハハハ、どーだ参ったか?」 「はー…疲れたよもう。」 「おれをバカにするからだバァカ。」 「飛段にだけは罵られたくないな。」 クスクスと笑うナマエ。 飛段はその笑みになんとなく違和感を感じた。 「そーいやよォ。」 「ん?」 「お前、冷え性だったっけ?」 「なんで?」 「いや、なんか冷たかったなーって。」 寒いかのかァ?、と飛段はナマエを見つめながら心配そうに訊ねた。 「なに言ってんのさ、飛段。」 私、もう死んじゃってるんだよ。 「…あー…そう、だったなァ…。」 ポリポリと頭を掻く。 「…バカだよなーお前もよォ。」 「む…だから飛段に言われたくな、」 「いやバカだろーがよ。」 不死のおれなんかを庇って死ぬなんて。 「おれ、死なねーってあんだけ言っただろォ?」 敵からの攻撃をナマエは急所で受けた。 飛段を庇って。 故に即死、だった。 「だってさ、私、嫌だったんだもん。」 「おれが死ぬのが?」 「飛段死なないじゃん。それに関してはなんの心配もしてないけど。」 「じゃあなんだよ。」 焦れったくなり、飛段は答えを急かす。 「…飛段が。」 「は?」 「飛段が傷つくのが、嫌だった。」 儚く笑いながら静かに漏らした。 「飛段、不死だからって無茶し過ぎ。」 「……………。」 「そんなだから角都にも怒られるんだよ、手間を増やすなって。」 「……………。」 「飛段は死なない、けどそれは自分を粗末にしていいってことじゃないんだよ。」 ナマエの冷たい手が飛段の手に重なった。 「ね、飛段。」 「……………。」 「最期に飛段を守ることができて良かった。」 「……っ!」 「一緒に笑えて良かったよ。」 「ナマエっ……。」 「もう、逝かなくちゃ。」 「…!嫌だ、逝くなっ!!」 ぎゅ、ときつく抱き締める。 ナマエは困ったように笑った。 「…私も、ジャシン様に愛されたかったな。そしたら飛段ずっと一緒だったのに。」 薄くなるナマエの身体。 飛段は前が滲んでしまっていて、ナマエがよく見えなかった。 「じゃあまたね、飛段。」 飛段の手にぽつ、と雫が落ちた。 神様、さようなら 生まれて初めて、不死を呪った [*前] [次#] |