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海賊になる、と彼はよく言っていた。
「明日、海に出る。」
「………な、」
「キラーも一緒だ。」
「……………。」
「明日からオレ達は、」
海賊になる。
「……………そっか。」
それしか言えなかった。
キッドのことだ、てっぺんになるまでここには戻らないのだろう。
少なくとも数年…下手したらもう2度と…、
「…目標、は」
「あァ?」
「目指すは、海賊王?」
「バァカ、たりめーだろ。」
「はは…だよね。」
ニヤリ、と口角を上げるキッドの顔はまさしく赤い悪魔だ。
まだ成人したばかりなのになんでこんな悪い顔ができるのか。
「…キッドなら、なれるよ。」
キッドなら、と信じてる。
彼ならきっととてつもなく強い王になると。
彼以外に王になる者はいないと。
「…頑張ってね。」
「……………。」
「ここから、応援してるから。」
声が震える。
泣くな泣くな。
ホントは行かないでほしい。
そんな危険なことしないでほしい。
ずっと私の傍で笑っていてほしい。
けどキッドの夢を邪魔する権利なんて…私にはないから…
「…私のこと、忘れないでね。」
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