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※学パロ
この世界を目の当たりにしたときは思わず自分の頬をつねった。
海賊も海軍もいない。
"ひとつなぎの大秘宝"、"新世界"、"グランドライン"ー…あっちの世界では当たり前のようにあったものがもなかった。
最初の内は元海賊だった私にとって退屈なことこの上なかった。
…彼に出会うまでは。
「おーいナマエ!」
窓際である自分の席で音楽を聞いていると誰かに呼ばれた。
ヘッドフォンを首にかけてその声のする方に顔を向ける。
「…なに、エース。」
「一緒に昼飯食おうぜ!」
「いーけどルフィとサボは?」
「ルフィは今日はダチと食うみたいだ、サボは委員会で遅れるってよ。」
近くの椅子を勝手に引っ張りだして腰を下ろすそばかすが印象の同級生。
前世で私が知ってるそのままのエースだった。
大食いなところも。
食べてるときに寝てしまうところも。
笑顔が眩しいところも。
なに1つ変わってなくて安心した。
「エース、また他校のと喧嘩したの?」
「し、してねェよ。」
「嘘ばっかり、足引きずってる。」
「なっ、足はやられてるねェよ!」
「やっぱしたんじゃん。」
「…はっ!!」
しまった、とでもいうような顔。
エースは単純だから吐かせることは簡単だ。
「あれ程喧嘩はするなって言ったのになんで分かんないかなーエース君は。」
「う…、」
「そんなんじゃ実らないぞー。」
呆れた眼差しでエースを見る。
俯いてショボくれているあたり反省はしているようだ。
「…あの人を振り向かせんでしょ。」
「……………。」
「それともなに?諦めんの?」
「っ、ぜってェやだ!!」
「じゃあこんくらい耐えてみせなさいよ、男ならなおさらでしょ。」
「……………。」
「私も全力でサポートするし応援する。だから頑張んなよ。」
「…おう。」
私の言うあの人とは以前オープンキャンパスで訪れた隣町の大学に通う1人の女子大生のこと。
広い大学内でエースと迷ってしまった際にお世話になったのだ。
とても優しそうな雰囲気を纏っていて笑顔が素敵なのが印象的だった。
そんな人にエースは惹かれた。
…一目惚れ、だった。
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