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「う…、ごちそうさまでふ…。」
「もっと感謝の気持ち込めろよ。」
口元をおさえて苦しそうに言うナマエ。
感謝のかの字もない。
「こんな模範的な質素な飯食わされて感謝なんてするかしてたまるか。」
「すげェな、今息継ぎしなかったぞ。」
食器が乗せられた盆をひょい、と持つ。
「わ、片してくれんの?やっさしー。」
「調子いい奴だな。後で薬持ってくるから少し待ってろ。」
「はーい。」
そんなやりとりをして俺は病室を後にした。
「…トラファルガー先生。」
薬を持って部屋を出ようとしたところを1人のナースに呼び止められる。
2人っきりの密室、濃い化粧。
察して俺は内心憂鬱な気分になる。
「なにか用か。」
「んもう…つれないですね。」
「ねェなら行くぞ、患者が待ってるんでな。」
「患者って、あの子でしょう?」
ドアノブに手をかけたと同時に後ろから抱きしめられた。
化粧の臭いがより一層強くなった。
「ミョウジナマエ、だったかしら?ナースの間じゃかなり不評なのよね。」
わざとらしくため息を吐くそいつはベラベラと勝手に続ける。
「無愛想だし文句は多いし…まだ19のくせに生意気な子なのよね。」
「……………ほう。」
「トラファルガー先生はお忙しい身だから知らないかもしれないですけど、あの子あんな性格だからか友達いないんですよ?お見舞いに来た子なんて1人もいないし。」
「……………。」
「それに、家族とも上手くいってないらしいんですよね…ほら、家族もあまり来ないでしょう?」
「……………。」
「もう捨てられたも同然ですよね、あの子…他の人たちもさっさと逝くか、退院してくれって話してるんですよ、トラファルガー先生もそうでしょう?」
クスクスと笑うナース。
細い指が体をまさぐる。
「ね?もうほとんど孤児状態の患者なんてほっといて私と、」
「黙れ。」
地を這うような低い声。
その一言でナースはピシリと固まってしまった。
「…さっきから聞いてりゃあることないことベラベラと…虫唾が走る。」
「ト、トラファルガー先生、」
「2度と俺に話しかけるな。」
そう吐き捨てナマエの元へと足を運んだ。
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