妖精を捕まえろ!
-星奏side-
駅前通りで東奔西走。陸上部でもこんなに走らねえよ!ぐらい走った俺たちは、やっとのことで音楽の妖精とやらを捕まえたのである。
「出せ!出すのだー!我輩悪いことしてないのだー!」
虫かごの中でぎゃんぎゃんと喚くそれは、往生際悪く、言い訳をしやがった。
「音楽の祝福を与えようと思ったら、間違えてしまったと言っているのだー!」
「…ったくうるせえなあ。元に戻してくれりゃあさっさと解放するっての」
「嘘くさいのだ」
「嘘くさいのはお前の存在だ」
「天誅を下すべきです」
「…あれ、ハル、お前…この妖精と同じ声じゃねえか…」
「嫌なところに気付きますね響也先輩…」
「何の話なのだー」
「ああ、本当だ。同じだね」
「………………………………屈辱です」
がっくりとうなだれるハル。
その横で(ハルと同じ声で)喚く音楽の妖精とやら。
「仕方ないから元に戻すのだ。小日向かなではどうしたのだ?」
「あ、確か響也が抱っこしてたよね」
皆の視線が俺に集まる。
が、俺の腕は空っぽで、手に虫捕り網を握っているだけだった。
「………………響也、ひなちゃんは?」
「………………………………えーと、」
忘れた、なんて言ったら皆どういう反応するだろうか。
「…………………………てへっ☆」
殺気のこもった視線が痛い。