不器用な僕ら




「衛藤くん」

「………………」

「衛藤くん」

「………………」

「えとーうくーん」

「………………………」

さっきから恋人を呼んでいる、のだが聞こえてないんだか無視してんだかこっちを見向きもしない。どうした衛藤。なにした私。もしかしたら呼び方が気に入らなかったとか?そうかな?そうだよね!

「衛藤きゅん☆」

「……、…」

少し反応した。ピクリと肩が動いただけだったけど。しかし結局だんまりだ。
うーん、一体どうしたんだろうか彼は。
ヴァイオリン弾いてみるか?…いや、それは私が嫌だよ。なんか怒られそう。「あんた俺が不機嫌なのにそんな下手くそな演奏聴いて機嫌よくなると思うの?馬鹿じゃないの?別れようか」とか言われたら私泣き死ぬよ。
あ、やべ。想像したらリアルに涙でてきた。なんて情けないんだろう。いつまでも後ろを向く衛藤くんに、気付かれないうちにボロボロ出てくる涙を止めようとしたが止まらない。

「…香穂子?」

うあ、気付かれた。
いきなり黙ってしまった私に不信感を抱いたのか、やっとこちらを向いた衛藤くん。
そして泣いている私にぎょっと驚いておろおろと私の頭を撫でた。

「な、ど、どうしたんだよ?」

「………………」

今度は私がだんまりだ。
ていうか言えない。言えるわけない。衛藤くんに別れを告げられたのを想像して勝手に泣くとかなんだそれ!

「香穂子」

衛藤くんが優しく私の名前を呼んだ。俯いていた顔をあげると、そこには俯いた衛藤くんが。

「俺さ、イライラしてたんだ。せっかく恋人同士になったってのに、あんたはずっと衛藤くん衛藤くんて」

「………………」

「だから、あんたが自分から桐也って呼んでくれるの待ってたんだ。呼んでくれるまで無視してやろうと思って。………でもそれはあんたを傷付ける行動だったな、謝るよ、ごめん」

しゅんとうなだれる衛藤くん。
なんだろう、可愛い。衛藤くんが可愛いよ。そうか、衛藤くんも寂しかったんだ。
ふは、と笑いを漏らすと、衛藤くんは顔を上げて「笑うなよ!」と抗議してきた。その顔は真っ赤だ。

「桐也」

「香穂子…」

「私ね、桐也が大好きすぎて涙が出てきちゃったの」

私ってば阿呆だよね、と笑うと、桐也は私をぎゅうっと抱き締めて笑った。

「俺はあんたが思う以上にあんたが大好きだけどね!」







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