バタバタとうるさく足音を立てて甲板を走り回るのは、2番隊隊長の火拳のエースと部下であり彼女でもある名前。
「今日は始まったか」溜め息を吐くどころか笑いが込み上げてくるクルーたち。
「エース隊長! 何でこう毎日毎日イタズラばかりするんですかぁ!」
ペシャペシャと名前が走ったところは水浸しになっていく。
「少しくらい危機感持てばそうなんねぇよ!」
「こんなことしなくたって良いじゃないですか! ってひゃぁあ!」
ツルン――…
良い天気だからと名前が甲板に出て洗濯物を洗っているときだった。
エースは後ろから、水をギリギリまで張ったタライを頭から一気に名前へかけた。
そして絞ることも拭くこともしないでエースに怒って追いかけっこ状態。
最悪なことに被った水で見事に顔面から倒れる。
「っげ。大丈夫か名前!」
「いひゃい」
「あーぁ、鼻が赤くなってらぁ」
鼻の先端に触れると何か良からぬことを思いついたのか、笑うとエースはカプッと頬に噛み付いた。
「これで鼻だけ赤いの分からねぇだろ」
「っ!!!!」
「おー、耳まで真っ赤」
「あんまりからかうなよい、エース。名前は着替えてこい、風邪引くよい」
「さーて、昼寝するか」
大の字になって寝転ぶと数秒で寝につく。
「あ、良いこと思いついた」
「イタズラするのは良いけど、程々にしないと後で倍返しされるよぃ」
「はーい!」
甲板で洋服を絞ると走って船内へと入っていく名前。小さなくしゃみを連発して。
何か嫌な予感がしたのか、みんなも船内に入ると静かな甲板に残るのは寝ているエースだけ。
「名前、本当にそれでやるのかぃ
心配になって部屋を訪れたマルコは「来るんじゃなかったよい、馬鹿馬鹿しい」と言って溜め息吐いた。
「えっ、あ、名前!?」
驚くサッチは耳まで赤くして後ずさる。おまけに鼻血まで出して。
鼻血出されると思わなくてサッチに引きつつもエースがまだ寝ているであろう甲板へ向かう。
「エース、エース!」
ペチペチと頬を叩いて起こしにかかる。
「サッチにセクハラされたー」
「サッチィィイイ!!!!」
「嘘だよ」
さっきとは逆にエースが顔を真っ赤にさせて口をパクつかせる。
「おま、な……格好」
「エースの服って大きいよね? 私が着るとワンピースみたい」
一回りすると下着が見えるか見えないかくらいに裾がヒラリと広がる。
「名前」
俯いて聞こえないくらいの声で呟けば、エースは次の瞬間押し倒していた。
無邪気なふりして
(この確信犯)
(ん?)
(襲われても文句言うなよ?)