「そこで何してる」


昼休みには早すぎるそんな時間に学校の屋上でそう聞かれたのは彼もまた私と同類だということ。だけど今回ばかりは同類とは言えないだろうな、なんて誰だか分かりきった相手に振り向きもせずに応える。


『‥何してると思う?』


そう問えば、彼は恐らく目元の隈より目立つようなしわを眉間に寄せるのだろう。分かっていながらも後方にゆっくり、彼の方へ振り返った私はきっと性格が悪い。


「‥‥言いたくねェ」

『言っちゃえば良いのに』

「‥言ったらお前はどうなる」


そんなの自分がいちばん分かっているくせに。

話すには距離があった数メートルを詰めて彼が私の伸びた影を踏む。阻むのは壊れかけた簡単な網格子だけ。彼‥ローならいとも容易く飛び越えられる高さのソレが今はとても高く感じて仕方なかった。


「こっちへ来い‥」

『ふっ‥なんで―?』

「良いから早く」

『‥‥ロー‥』

「ヤメてくれ‥」



手を伸ばせば届きそうな感覚の中、風は緩やかに吹く。

私が立っている場所が、一歩でも足を後ろに出そうものならすぐさま落下出来るほどの際どい場所だってことも忘れてしまえるほどに。凄く風が心地よい。


「何を考えてるんだ、お前は‥」

『なにって‥‥。ロー‥好きだよ?』

「な、に言って‥っ」



私の自慢の彼氏。
私には勿体無いと何度感じたことだろう。



ブアッと一瞬強い風が吹いたとき体が後ろに逸れたと同時に感じた浮遊感。夕日に染まった空が視界全てを覆う片隅に一瞬見たことも無いローの焦った顔が映った。


追うように聴こえた気がした声はよく分からないうちに消えてなくなった。


‥‥バイバイ。




















ってゆうのは嘘だけど








慌ててフェンスを乗り越えて下を見れば、彼女の姿はない。

三階建ての校舎から飛び降りて無事で居られるハズが無―――




『ちょっとキッド、予定と違う!』

「悪ィ。思ってた以上にベランダが狭かった」



「‥‥‥は?」


直ぐ下のベランダから聞こえてきたのは先ほど飛び降りた彼女のはっきりとした声。


『ごめん、ロー。ドッキリ‥だから。キッドなんかの話に乗らなきゃ良かった‥』



「見ものだったぜ?」


彼女の横に居る眉無し赤毛野郎のさぞ愉しげな顔と言葉で全てが一致した瞬間だった。



「ユースタス屋‥‥殺ス!」









‥‥‥‥‥‥‥
企画サイト様
『ごめんなさい。』へ提出。

ありがとうございました♪



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