ブーブーブー
授業中、机の隅に置いていた携帯が震えた。
(あ、メール。)
先生は授業に夢中で気づかない。
よし、この様子ならばれないだろう。
私は先生の目を盗んで机の下で携帯を開いた。
(花井からだ)



from:花井
title:話がある
―――――――――――――
授業が終わったら
7組の前に来てくれ



(めんどくさいなぁ……)
私は先生の様子をうかがいながらカチカチと返信を打つ。



to:花井
title:no title
―――――――――――――
えー、めんどくさい( ̄皿 ̄)
用があるならお前がこっちにこい



(よし、送信っと)
私はカチッと送信ボタンを押した。
そして、しばらくしても返信がないから了解したのだろうと思い、お休みタイムに突入した。
先生のくぐもったような声はちょうどいい子守唄になり、すぐに眠りに落ちた。


キーンコーンカーンコーン
チャイムにより授業の終りが知らされたがどうも起きる気にはなれない。
私は机に突っ伏したまま花井を待った。
しばらくして私が少しうとうとし始めたころ、頭を軽く叩かれた。
「痛い。」
机に突っ伏したままそう講義したら、また叩かれた。
しょうがないから私は顔をあげてやった。
「もー痛いなー。これ以上私がバカになったらどうしてくれんのよ。」
「じゃあ、1回目で起きろよ。てか、おでこ真っ赤だぞ!!」
「あー授業半分以上寝ちゃったから。」
なんて笑いながら言ったら、何しに学校来てんだよとため息交じりに言われた。
「で、話って何?」
「あー、ここじゃなんだから廊下出ねぇ?」
ここでもいいじゃんかと思ったが口には出さず素直に花井の後について行った。
私って優しー。
廊下は昼休みの割には静かだった。
私は壁に寄りかかり、花井の方を見た。
目線の高さが一緒なので首が疲れない。
「で、なに?」
「あの、さ、冴木。」
「ん?」





「スカート貸してくんね?」





一時停止。
………。
は?
スカート?
って私が今はいてるコレだよな。
は?
「………花井ってそうゆう奴だったんだ…。ごめんね、気づいてあげれなくって………。」
私が憐みの目を向けてそう言ったら頭を叩かれそうになったので避けた。
「バっ!!!ちげーよ!!」
「えーつまんないの。じゃあなんで?」
「文化祭で女装喫茶やるんだと。で、男子は各自誰かからスカートを借りなきゃいけないんだとよ。」
「へー。てか、それクラスの子に借りりゃいいじゃん。」
「それも考えたんだけどさ、身長が合わなくってかなり短いのはくことになるんだよ。」
「あー、あんたのクラスの女の子みんなちっちゃいもんね。でも、いいじゃんそれでも。」
「やだよ。誰がヤローの足なんか見て喜ぶんだよ。」
「私。」
そう言ったら可哀そうなものを見るような目で見られた。
そして、花井はため息を一つついてから言った。
「だから、貸してくれ。」
「うーん、私は別にいいんだけどさ、ウエストはいるかなー。」
私は自分の腰に手を当ててから花井の腰に手を当てた。
「んー、入りそう、かな?てか、なんで赤くなってんの?」
「何でもねーよ。」
「ふーん。まぁ、いいや。一回はいてみる?」
「は?」
そう言って私はスカートを脱いだ。
「な、な、おま、!!!」
花井は顔を真っ赤にしながら目を覆っている。
「ちゃんと短パンはいてるよ!!」
「な、なんだ。」
「なんだとはなんだ。前の前の授業が体育でさ、着替えるのめんどくさくて途中でやめちゃったんだよねぇー。」
そう言いながら私は花井にスカートを渡した。
それを受けっとった花井の顔はいまだ赤いままだ。
「今、はくの?」
「当たり前でしょ。」
私がそう言うと花井は渋々といった感じにスカートに足を通した。
「あ、はけそうだね。」
私はスカートのホックやらなんやらをいじって大丈夫なことを確認した。
ふと花井の方に目をやれば、目の前で両手で顔を覆っていた。
「どしたの?」
「文化祭当日、オレは1日この羞恥に耐えなければならないのか……。」
「んー頑張れ。今は下にズボンはいてんだからいいじゃない。」
「てか、お前スカート短すぎ。」
「そう?」
私のスカート丈はももの真ん中より少し下くらいで、短いといわれるほど短いわけではない、と思う。
「みじけーよ。」
「えー不満ならスカート長い子に借りればいいじゃんか。」
私がそう言ったら花井は顔を隠していた両手を外し私の目を見てきた。





「お前のじゃなきゃイヤなんだよ。」





「は?んーまぁいいや。いつ貸せばいい?」
「明日。」
「りょーかい。他になんか貸してほしいものある?」
「あー、リボンかネクタイ持ってるか?」
花井はスカートを脱ぎながら言う。
「リボンならあるよ。」
「じゃあ、それかして。」
「おっけ。」
私は差し出されたスカートを受け取った。
「じゃあ、頼んだ。」
そう言って花井は私の頭をなでた。
そしてため息をつきながら
「お前ってホント鈍感。」
そう言って自分のクラスに帰っていった。





気付いてください





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回遊魚

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