帰り道、街灯に照らされた暗い道を壱とちんたら歩いていると、あ、と壱が何かを思い出したかのように声を発した。
「どうかしたか?まさか学校に忘れ物したとかじゃねぇだろーな?オレもう、もどるのやだぞー。」
オレがふざけてそう言ったら、
「ちがうっつの!!」
そう言って背中をバシンと叩かれた。
それはもう、力加減を知らない彼女だからおもいっきし。
力強く。
「ってーなぁ。ったく。じゃあなんだよ。」
「いやさ、私と準太ってもう出会ってから10年経つんだなと思いまして。」
「そんなこと考えてたのかよ。」
そう。
オレと壱は小学校1年生からの付き合いでもう10年になる。
「時間が経つのは早いもんだねぇ。」
なんてしみじみ言う彼女の横顔を見て、綺麗になったな、なんて思う。
小学校の頃の壱は髪が短くボーイッシュで女の子にもてる感じの子だった。
が、しかし、今となっては髪は肩まであり、なんともまぁ女の子らしくなったもんだ。
聞く話によると、月に3、4回は告白されるそうだ。
まぁ、なぜか毎回断ってるらしい。
「10年ってあっという間―。」
「10年ねぇ。っつ―ことはオレの片思いも10年目か。」
「え!!準太片思いなんかしてたの!?しかも10年って!!一途だなっ!!!」
驚いた顔をこちらに向ける壱に心底あきれる。
普通、気が付きますよね?
「すごいなぁー。てか、いいなぁー。準太に10年も想われてるとかその子幸せだね。」
「なぁ、壱。」
「うん?」
「気づかねぇ―の?」
「何に?」
「お前は鈍感の神様か……。」
「はぁ?」





「オレの片思いの相手、お前なんだけど。」





「………。」
「………。」
しばしの沈黙。
「えぇぇぇぇええええええ!?ウソだぁ!!」
「ウソじゃねぇっつの。」
顔を真っ赤にして口をわなわなさせる壱を見て可愛いと思う。
「準太って私のこと愛してたのっ!?」
「そこまで言ってねぇだろ!!」
「え、愛してないの?」
あからさまに残念そうな顔をするな、こいつ。
「……、愛し、てるっつーの。」
あー。
顔が熱い。
心臓がうるさい。
手汗すごい。
「私も準太のこと愛してるよ!!」





10年目の





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スランプから抜け出せない……


回遊魚


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