放課後、木漏れ日差す木の下で私はひたすらにクロッキー帳に鉛筆で線を走らす。
さらさらと。
そのうち、ただの線だったものがカタチを表す。
その瞬間が私は好き。
ふと、クロッキー帳が陰った。
そう思った瞬間、
「冴木っていつもここで絵、描いてるよな。」
上から声が振ってきたのだ。
私は驚いてクロッキー帳をギュッと胸に抱き、バッと顔をあげた。
それは、私の片思いの相手である同じクラスの高瀬準太だった。
「何描いてたの?」
「な、んでもない。」
「いいじゃん。見せてよ。」
彼がそう言った瞬間、私の胸からクロッキー帳を奪われた。
そして彼は1枚1枚、丁寧にページをめくっていく。
「へぇー上手いじゃん。オレ、こんなに描けねぇわ。」
「そ、それ以上みないで!!」
ダメ、ダメ、ダメダメダメ!!
それ以上見ちゃ……
「え、なんで?」
「う、うまくないし、汚いから!!」
私は思わず声を張り上げる。
「いいじゃん、いいじゃん。」
ニコニコして顔でページをめくっていく。
ダメなんだって!!
「それ以上はホントにっ……」
私がそう言った時、
ぶわぁぁああああ
と大きな一陣の風が吹き、クロッキー帳をバラバラとめくっていく。
そして、ピタリと止んだ瞬間開かれていたページは一番見られたくなかったページ。
「きゃ、み、見ないでぇ!!ダメぇ!!!!」
私が立ち上がり、クロッキー帳を隠したときにはもう遅かった。
彼はそのページをはっきりとみてしまっていた。
あぁ、もう、死にたい。
そこに描かれてたのは、
「冴木、10番って、もしかして、オレ?」
「え、あ、その……。」
そう、そこに描いてあったのは練習試合を見に行ったときに描いた高瀬君。
そのページを境に後ろはほとんど高瀬君しか描いてない。
あぁ、ばれちゃうっ!!
「ねぇ、これ、オレ?」
私は声に出せず、ただうなづいた。
「まじ!?え、あー。っと……」
チラリと高瀬君の顔を見たら彼は真っ赤になった顔を右手で隠していた。
それを見て私の顔もボッと火を噴くんじゃないかってほどに熱くなった。
「あ、のさ、冴木」
「はい。」
「これってさ、期待とかしちゃってもいいの?」
私は目を大きく見開いた。
「ぇ……」
「オレ、自惚れちゃうよ?」
それって、それって……
「もし、さ、その、そうであるんならさ、部活終わるまで待っててくんない?」
「えぇ!?」
「そしたらオレ、冴木に話したいことあるし……」
「喜んで!!」
うわっ!!
夢みたい!!





風が運んでくれたもの





-------------------------


回遊魚


back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -