もうすぐ1回戦が始まる。
「始まる前にトイレいっとこ。」
私はパタパタと応援席下の廊下を走る。
トイレに向かう途中見慣れたユニフォームがうずくまっていた。
「あれ?栄口君、下痢?」
「あぁ、冴木。って、女の子がそうゆうこと言うんじゃありません!!」
「はーい。じゃあ何してるの?まさか具合悪いとか!?」
「大丈夫そんなんじゃないから。」
じゃあなんだ?
私が首をかしげると栄口は、ははっと情けなく笑った。
「ちょっと緊張しちゃってるみたい。」
「あぁ。」
なるほど。
見てみれば栄口の手は小刻みに震えている。
私は栄口の目の前にしゃがんみ、鞄をあさる。
「ねぇ、手、出して。」
「?」
栄口は頭に疑問符を浮かべながらも私に手を差し出した。
「コレ、貸してあげる。」
そう言って私は鞄から取り出したものを手に乗せる。
「何?これ。」
「お守り。これね、私が中学の時に全中に導いてくれたすごいお守りなんだから。」
ニカッと私は笑って見せた。
「心強いでしょ?」
「うん。ありがとう。」
「じゃあ、ついでに。」
私は栄口の手を取ってきゅっと握った。
少しばかりひんやりしている。
「頑張れ。栄口なら大丈夫。」
そう言って私は手を離した。
そして、立ち上がろうとした瞬間、手首を掴まれてグッと栄口に引っ張られた。
「え?」
なんて間抜けな声を出した途端、私は栄口の腕の中にいた。
「え?………えぇ!?」
「少しだけ、」
「へ?」
「少しだけこのままでいさせて。」
うぇぇええええええええ!?
みんな見てますよ!?
ちょ、ちょ、ちょ!!
心臓うるさい!!黙れ!!
あ、黙ったらダメ。死んじゃう。
じゃなくて!!
どうゆうこと!?
今、どうゆう状況!?
栄口に手を引っ張られて、体制崩した私は栄口の足の間にすっぽり収まって、しまいには私、抱きしめられてる!!
ぎゅぅぅぅうううっと栄口の腕に力がこもる。
そして、パッと解放された。
「ありがと。なんか今日頑張れる気がする。」
そう言って栄口はニコッと笑った。
「じゃあ冴木、これ、借りるね。応援よろしく!!」
私が貸したお守りを見せてから、栄口は走ってグラウンドの方に向かった。
私は地面に座り込んだまま彼の背中を見えなくなるまで見送った。
「な、にあれ。」
体中が熱い。
あぁ、いま私の顔絶対に真っ赤。
私は両手で顔を挟んでそう思った。
「栄口ってなんなの!?」
私だけじゃなかった。
彼も私に負けないくらいにドキドキしてた。
あぁ!!もう!!
まだ心臓がうるさい!!





伝わる鼓動





-------------------------
この後ヒロインはトイレに行くの忘れて我慢しながら試合を見る羽目になります。
きっと。
いや、絶対。


回遊魚


back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -