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「38度ね。何か買ってくるから、あんたは絶対に安静にしとくのよ、絶対よ! 」

そう行ってバタバタと部屋を飛び出して行ったお母さんの姿を見送り、ため息を吐く。
最悪だ。ここに来て風邪を引いて寝込む羽目になってしまった。最近冷えてきたから気をつけてくださいとみんなに言ったところだったのに、自分が熱が出て倒れるなんてなんと情けない。本当は学校に行きたかったのだが、母親に、みんなに移して迷惑かけたらどうすんの、と怒られてしまった。結局、それもそうだと思い休むことにした。幸いにも、近日にライブが迫ってるわけでもないから、練習関係で迷惑をかけずに済んだ。それでも、私が風邪で休んだことを知ったのだろう、同じクラスの友人からは心配の連絡が来ていることが分かる。こうやって心配してくれるなんて、本当に良い友人を持ったものだ。早く治さなければ。そんなことを考えていると、自然と瞼が閉じてきた。


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「……え? 今日なまえ休みなの? 」
「そうみたいだな。熱が結構あるんだとよ。」
「ふーん。」

ここ最近ずっと頑張ってたからなぁと苦笑いをするま〜くんを横目に、今日はなまえに会えないのか、と落胆する。学校ではほとんど一緒にいるから、なまえが学校にいないなんて味気がない。つまんないなぁ、と零した俺に、さっきまで苦笑いしてたま〜くんがもっと苦そうな顔をして、

「今日は迷惑かけるんじゃないぞ? 」

と言ってきた。それはどっちにだろう。どちらにせよ、ま〜くんにもなまえにも迷惑なんてかけないよ、流石にとムッとしながら答えると、ま〜くんはそれもそうか、と相変わらず人の良さそうな笑顔を浮かべていた。



「…………。」

昼休みになった。今日はなまえがいないというのに、俺は何故かこの中庭にいて、一人で寝っ転がっている。ま〜くんに言えば一緒に食べてくれるだろうに、何故俺はここにいるのか。我ながら馬鹿だと思う。今ここに来たら寂しくなるに決まってるのに。
俺の気持ちとは反対に、今日はとても良い天気で、良い風が吹いていた。いつもだったら、今日は気持ちいいね、なんて言ってなまえが笑う。いつもだったら、こんな気持ち良い日はなまえの膝で眠る。いつもだったら、この日は椚先生に怒られるから嫌だ、と言いながらなまえが困った顔をする。いつもだったらーーー。


ごめん、ま〜くん。俺もう駄目だ。


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誰かが泣いている。俺を置いて行かないで、そう言って泣いている。誰だ、あなたは一体誰なんだ、そう問うても、その人はただただ泣いている。どうして泣いているのか、それにも答えてくれない。焦る私は、絶対に置いて行かないから、そう伝えた。すると、彼はじっとこっちを見つめて言うのだ。

「ーーーーーー。」


ピンポーン、ドンドン。

インターフォンの音が聞こえ、ハッと目をさます。何だ、今の夢は。変なところで目が覚めてしまったからか、変な汗が出てるなぁ。インターフォンが鳴っているのに、誰も出る様子がないのを見ると、お母さんは出掛けているのだろう。このまま出なくても良かったのだが、どうもさっきから扉を叩いてる音も聞こえてくる。ご近所迷惑にもなるし、何だか不気味なので、モニターを恐る恐るみれば、なんと凛月くんだった。何故。今学校じゃないのか。俯いて、表情が見えない凛月くんを不思議に思いながら、玄関へと向かう。

ドンドンッ ドンドンッ ドンドンッ

玄関へと向かう途中でも凛月くんは家の扉を叩き続けた。まだ熱っぽいので、その音に頭がガンガンする。これはただ事じゃないぞ、と少し焦る。どうしたというのだ、何かあったのだろうか。

「凛月くん、どうし」
「なまえ! 」

私のどうしたの、という言葉は凛月くんによって遮られてしまった。扉を開けた瞬間に、凛月くんが抱きしめてきたからだ。本当にどうしたのだろう。抱きしめる力も強く、体がギチギチと音を立てている。私の肩に顔を埋めており、凛月くんの表情は読み取れなかった。とりあえず落ち着いてもらおうと思い、凛月くんの背中をさする。すると、少しずつ抱きしめる力が抜けてきた。

「……凛月くん? 大丈夫? 」

まだ離れる様子はない。動かない凛月くんに、不安な気持ちが大きくなってきた。まず風邪を移さないか、そんなことばかり心配していた。

「俺を置いて行かないで。」

ポツリ、呟く。えっと零した私の身体を離し、じっと見つめられる。

「俺を置いて行かないで。」

もう一度そう言われ、凛月くんがまだ落ち着いてないことを悟る。とりあえず場を収めねばならない、このままではきちんと話も出来ないだろうから。

「うん。置いて行かないから。落ち着いて。」
「本当? 本当に? 」
「うん、本当。」
「……約束だよ。」
「うん。」

そう言うと、すうっといつもの凛月くんに戻ったような感じがした。良かった、落ち着いたみたいだ。とりあえず、中に入ってもらって、話をゆっくり聞かなければ。
それにしても頭がまだクラクラするなぁ。

「……その言葉、覚えたからね。」

凛月くんが何かを言った気がするけど、ぼんやりしてて聞き逃しちゃったな。
そういえば、さっき凛月くんが置いて行かないでって言ってたけど、どっかで聞いたことある気がする。デジャブってやつかな。