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「おい、なまえ。お前ちょっとヤバくないか? 」

そう佐賀美先生が深刻そうな面持ちをして私に告げた。何のことか分からなかったが、彼はこの前の中間テストを取り出してきた。え。


「もうすぐ期末テストだけど、大丈夫か? 気になって前の学校の成績も見てみたんだが、結構ヤバイよな? 」
「…………ヤバいっす。」
「このままじゃお前補講だぞ。冬休みも泊まり込み行事とかあるわけだし、ちゃんと勉強しとけよ。」

じゃ、俺今から職員会議あるから、と早々に職員室から追い出されてしまった。言うだけ言っといてこの適当さである。担任だったらもうちょっと協力してくれたっていいじゃないか。しかし勉強か、どうしたもんだろう。同じクラスの氷鷹くんは賢いのは勿論の事、ちゃっかり明星くんも賢い。遊木くんは努力してそれなりの点を取るわけだし、そもそも夢ノ咲のアイドル科の人たちは結構難しい入学試験をクリアした強者たちばかりなのだ。元は賢い。しかし私はどうだろう。元からダメダメなのだ。前の学校では普通に欠点スレスレを取り、セーフ!と言っていたら先生に頭を叩かれることが日常茶飯事だった。それくらいのレベルである。同じクラスの人に協力を求めるべきだろうか、いや、でも氷鷹くんは絶対チクチク説教してくるだろうし、明星くんは天才型なので絶対私には理解しがたい勉強法を勧めてくる。遊木くんはきっと自分を犠牲にしてまで教えてくれるだろうし、どうしたもんだろうかと悶々と悩んでしまった。

「いったぁ! どこ見て歩いてんの?! 」
「ひっ、せ、瀬名先輩。」

悶々としすぎて人にぶつかってしまったと思ったら、三年生の瀬名先輩だった。最悪だ。一番面倒臭い人にぶつかってしまった。見たところ機嫌もそんなに良くない様子だ。ヘルプミー遊木くん。今すぐ来てくれ。

「……何? ぶつかっといて謝りもしないわけ? 」
「あ、ごごごごめんなさい! 謝るから睨まないで! 」
「はぁ? 別に睨んでる訳じゃないけど。」
「す、すいません、色々考え事してて前見てなくて、すみません。」

ペコペコと頭を下げる。対瀬名先輩には素直に要求に応えるのが一番の近道である。だから早めに開放して欲しい。何かこれに託けてパシられたら面倒臭いなぁ。

「何、何か悩んでるわけ? 」
「へ? 」
「聞いてるんだけど。」
「あ、は、はい。実はこのままじゃ期末テストがヤバイって先生から注意を受けまして。ど、どうしようかなぁと悩んでいたわけであります、ハイ。」

予想外の質問にどもってしまい、意味の分からない口調になった。恥ずかしい、何だ、であります、って。すると先輩は何やら考え込んでいた。え、ど、どうしたんだろう。

「俺が教えてあげよっか? 」
「はい? 」
「勉強。」
「いや、良いです。」
「はぁ? 人が親切で言ってあげてるのに断るとか意味分かんないんだけど。良いの? 俺みたいな成績優秀な奴逃したらあんた絶対後悔するよ? 」
「後悔しても良いです、他の人当たるので。」
「はぁぁぁ?! ムカつく! ちょ〜ウザい! 人にぶつかっておいてよくそんな風な態度取れるねぇ! 良いよ、なまえにぶつかったところが痛いってみんなに言いふらすから。」
「ちょ、ちょっと、分かりました! 教えてください! お願いします! 」

そう言うと瀬名先輩は得意げな顔をしてしょうがないな〜と言ってきた。腹が立った。こんなことだったら神崎くんとかに頼めばよかったなぁ。というか、こんなに面倒臭いとか言う割に何で私に勉強教えてくれるんだろうか。
チラリと瀬名先輩を見やると、先ほどまであんなに機嫌が悪そうだったのにもう機嫌が良さそうだった。どうなってんだ。