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8歳


幼少期捏造





キングスカラーの金魚の糞と陰で罵られ続けていながらもヘラヘラ笑って暮らしている父と、その恩恵を受けてウハウハしている母。そんな二人の間に生まれた私は、二人にとっては待望の子どもであった。


偶然、同じ年に第二王子が生まれたからである。


物心ついた頃から母は私に仕切りに語った。
レオナ様に媚を売りまくりなさいと。
仲良くなればもっと私の家は立派になると。
幼い頃からそう強く強く語り続けられればそりゃあ言葉の意味はあまり分からなくとも、レオナくんと仲良くしなくちゃ…と思うのも無理はない。私は母の言う通り媚を売りまくった。父は一応、キングスカラー家の中でも重要なポジションの家臣だったらしく、私も王宮暮らしという恩恵を預かっていた。同い年ということもあり、必然的にレオナくんと遊ぶ係になるのには時間がかからなかった。当時のレオナくんは、それはもう虫も殺せないのではってくらいお目目がキラキラしてて、同級生とは思えないほどよく勉強をしていた。いつも小難しそうな本を読んでいる。対して、ちょっと歳の離れたファレナさんはいつも外で駆け回っていた。ちょうど、私の兄がファレナさんと同い年なもんだから、よく兄たちを連れてどこかへ行っていた。

「あれ、レオナくんどうしたの、こんなところで座って。」
「ナマエ…。いや、別に…。」
「あれ?魔道書だ。また魔法の勉強してたの?ほんとレオナくんはえらいね。わたしとは大違い。」
「…!うん。あのさ、さっき風の魔法を出せるようになって。この前より大きいやつ。」
「え、そうなの?!すごい!見せて見せて!」

レオナくんがいつもいるところにいないな、と思っていたら、彼の部屋の片隅で三角座りをしていた。なんだか元気がなかったから少しでも元気になってもらおうとあれこれ考えて、レオナくんを褒めた。落ち込んでいる時に褒めるのは一番相手にとって良いらしい。母が興奮しながら私に教えてくれた。
レオナくんはすくっと立ち上がって、風魔法の詠唱をする。途端にブワッと風が現れて、レオナくんの部屋中を吹いた。レオナくんの部屋にある大量の本が、一斉にパラパラと捲れる。前は手から出る程度だった風が、ちょっとの期間でだいぶ大きくなった。すごいな、毎日勉強してるもんね。

「すごーい!大きい風!私もできるかな。」

試しやってみたが、手の上でちょっと風が出てくるだけだ。ちっぽけな風。

「えへへ、すごいだろ?」
「うん!レオナくん毎日頑張ってるもんね!いい子、いい子!」
「……ありがとう。」
「元気になった?」
「え?」
「元気なさそうだったから。」
「ああ、うん…。父上に見せたかったから、見せに行ったんだけど…。」

そう言うとレオナくんはぺしょりと耳を下げた。私にはない獣人の耳は、本人が無意識のうちに感情を表すらしい。レオナくんは王様であるお父さんのことをとても尊敬していて、何かできるたびに王様に見せに行った。しかし、そのたびに落ち込んで帰ってくる。今回はたぶん、忙しくて構ってもらえなかったんだろう。それで、おそらくこう言われたのだ。「レオナ、ファレナを見なかったか?」って。
そう言われたかは分からないけど、ファレナさんが関わっているのは間違いない。レオナくんは王様になりたいみたいだけど、順番を考えるとファレナさんがなる可能性が高い。だからこそ今レオナくんは頑張ってるわけだけど。王様は何か用事があるとまずファレナさんを呼び出す。レオナくんが側にいたとしても。
と、いうことは母が私に教えた。私は能天気にレオナくんと遊んでいるだけなので、レオナくんの周りの話なんかなーんにも気にしていなかった。しかし、母は言ったのだ。こういう時は抱きしめてあげなさいって。

「え…?何してるの、ナマエ。」
「いや、お母様が落ち込んでいる人にはこうしろって…。」
「べ、別に落ち込んでない。」
「そうなの?じゃあいいか。」
「っ、ナマエ。…まだもうちょっと。」

レオナくんはそのまま私のことを抱きしめ返した。私が頭を撫で撫ですればグルルル、とうめき声をあげる。レオナくんの毛並みはふわふわなのだ。あー最高…。
そのままレオナくんはポツリポツリと愚痴を溢し始めた。どうして父上は兄上ばかりに構うのか、どうしてみんな自分を見てくれないのか、と。
レオナくんはこうなると長い。私はそのままモフモフを堪能した。母が、こういう時は黙って話を聞きなさいといつも私に言ってきたのでそのままじっとする。

「また今度、魔法見てくれる?」
「うん。」
「ほんと?」
「うん、約束!」

そう言うとレオナくんはちょっと恥ずかしそうにしながら、口元を緩めた。レオナくんはお顔がとても綺麗らしい。これも母が言っていた。確かに周りの子どもと比べても、かっこいいと思う。
そんなことを思っていたらバンと部屋の扉が開く音がした。見ると、ファレナさんがこれまた目をキラキラ輝かせていた。

「ナマエ!中庭に綺麗な花が咲いていたよ!君の兄もそこに居るから一緒に行こう!」
「あ、ファレナさん、ご機嫌よう。」

母仕込みの挨拶をする。ファレナさんはああ、と返事しながら、かなり興奮しているようで、私の腕を掴んで中庭まで連れて行こうとした。しかし、私の体はくんと後ろに引っ張られ、前にも後ろにも行けなくなってしまった。い、痛い。

「レオナ?どうしたの?」
「…だめ、連れて行かないで。」
「何故だ?!とても綺麗な花なんだよ?!見せたいじゃないか。」
「だめ!」
「え〜花見たいよレオナくん。」
「え……?」

レオナくんはとっても絶望しました、みたいな顔をした。しまった。母に怒られてしまう。

「ナマエも、僕じゃなくて兄上がいいの?」
「ち、ちがいます!ファレナさんの方が良いっていうわけじゃなくって、せっかく誘ってくれてるから…。その、レオナくんも一緒に行こ?」
「そうだね!レオナも一緒に行こう!」

はっはっはっ、とファレナさんの笑い声がレオナくんの部屋に響き渡る。レオナくんは表情には出してなかったけど、耳と尻尾が明らかに納得していません、と言った感じに垂れていた。隠しきれない獣人の感情…。

「…わかった。」
「やったー!レオナくん、いこ!」
「…!うん。」

私はレオナくんの手を握ってそのままファレナさんに着いて行った。綺麗な花が見られる!中庭の花って綺麗なんだよね。また新しいの植えたのかな〜。

「ナマエは花が好きなの?」
「うん!好き!お母様が好きで、よく部屋に飾ってるの。」
「へぇ…。」

後日、レオナくんは花の魔法ができたから、と言って私に花をくれた。ピンクのチューリップであった。部屋に飾りたかったので、母に花瓶が欲しいと言えば、誰にもらったのか問われた。レオナくん、と言ったら、母は踊り出さんばかりにスキップを踏みながら花瓶を用意したのであった。