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面倒臭いヒロインポジションの瀬名泉


※モブ目線



「面倒クセェ……。」

はぁ、とため息をついた人物をチラリと盗み見る。なまえくんはいつも忙しなく携帯の画面を指で触っているが、今はその動きを止めておでこに手を当てて項垂れていた。どうも彼の友人が常にメッセージを送ってくる人らしく、またその友人がすぐにメッセージを返さないとめちゃくちゃ怒るらしい。何だそれ、彼女かよ、と思ったが、それは違ったらしい。その友人は男だった。そんな人がいるのか。僕はそれを聞いた時開いた口が塞がらなかった。

「どうした? また泉くん? 」
「そう。この前クラスの女子と歩いてたとこ見られてたらしくてメッセージと電話が鳴り止まん。……あ、またかかってきた。」

そう言ってなまえくんは携帯の電源を切った。そ、そんなことをして良いのだろうか。ますます面倒臭くなるのでは。僕のその言葉は次の授業を知らせるチャイムの音で遮られてしまった。まぁいいか、だって何だかんだなまえくんも楽しそうだからな。


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「あー……やっと帰れる。明日の宿題って何だっけか。」
「明日は数学のプリントだけだよ。ってあれ、なまえくん、あの人、泉くんじゃ、」
「ちょっとなまえ! 」

げぇ。なまえくんはそう言って立ち止まった。僕もそれにつられて立ち止まる。なまえくんの友人である瀬名泉くんは、とても端正な顔立ちをしている人で、周りの女子たちがキャーキャー騒いでいる。そんなこと彼は気にも留めないで、なまえくんの方にズンズン進んでいった。あれ、何か今僕睨まれた? な、何でだ??

「何で電話もメールも出ないわけ? 意味分かんないんだけど。俺、いっつも言ってるよね? 五分以内に返せってさぁ。」
「お前だって返さない時あるじゃんかよ。」
「ハァァ?!! それは俺が仕事してる時だけでしょ?!! 」
「ちょ、ムキになんなって、ここ外だし、」
「何それ、ハァ? 仕事以外の時、なまえからメッセージ来たら即返信するじゃん、俺の努力も知らずによくそんなこと言えるねぇ? 」
「分かった、分かったから、家でゆっくり話聞くから。とりあえずここから離れよう。ごめん田中、今日先帰るわ。」
「あ、うん。」

そう言ってなまえくんは逃げるように彼の友人とこの場を去った。その際、泉くんは僕の方を見て誇らしそうな顔をしていた。ああ、これは、なかなかなまえくんも大変そうだなぁと思いながら僕も一人で帰路につくと、公園でアイスを食べながら手を繋いでいる二人を見た。何だ、やっぱりなまえくんも何だかんだ楽しそうじゃないか。


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「何で男同士で手繋がなきゃ駄目なんだよ。」
「返信しなかった罰。」
「ウゼェ……。アイス奢ってやっただろうが。」
「はぁ? それで済むと思ってんの? 言っとくけどまだ俺、気が済んだわけじゃないからね。」
「女々しいワカメめ……。」
「何か言った? 」
「ナンデモアリマセン。」