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終わりにしよう。
私から告げるはずだった言葉をこうもあっさりと告げられると、
人間は勝手なもので、私は思ったよりもショックを受けていた。
携帯を持つ手が震えている。
部屋にある時計の秒針の音がやけに耳障りだ。

レオとも話し合えない、あの人にも突き放される。
もう自分の気持ちの行き場がない。
私はただ静かに涙を流すしかなかった。
寂しい、というより、自分がもたらした結果にただ情けない気持ちになっていた。
メッセージをじっと見つめたが、それ以上何も彼は送ってこない。
私はそれを見ながら、何故、どうしてを繰り返していた。

そして、私の何故、どうして、という気持ちは段々と彼に直接聞きたい、という思いに変わってきた。
私の頭はレオと話すことよりも、彼の元へ行くことでいっぱいになっていた。
どうせレオは今日はここに来ないだろう。
約束をしたけれど、今日は帰ってきそうにない。いつものことであった。

今日はあの人の仕事が終わるのが遅い日だ。
もしかしたら、今職場の前で待っていれば会えるかもしれない。
そう思ったら、急に居ても立っても居られなくなり、私は上着を羽織って玄関に足を向けた。
自分でも、なんて愚かな女なんだろうとうっすらと思いながら、勢いに任せて扉を開けようとした。

その時であった。

「ただいま〜。って、なまえ?どっか行くのか?」

なんてタイミングなんだろう。先ほどまで待ち焦がれていたはずのレオがドアから入ってきた。

「もう遅いけど、コンビニ?じゃ、ないよな?その格好。」
「う、うん……ちょっと友達のところ……。あ、あのね、レオ。私急用が入ったから、話すのはまた今度……、」

そう言って玄関から出ようとすると、レオは私の腕を掴んだ。

「友達?何言ってんの。違うだろ。」
「え、」
「アイツのとこ行くんだったら行かせないけど。」
「あ、アイツ……?アイツって何?」
「まさかまだバレてないと思ってんの?」
「な、なにが、」
「え〜しらばっくれるの?今日オレにその話するんじゃなかったのかよ〜。まぁいつか言おうと思ってたから良いけどさぁ。」

レオがいつもみたいにケラケラ笑っているけど、私の心は鉛みたいに重くなっていった。バレてないと思ってんの、って、心当たりは一つしかないけれど、何でこの人はこんなに笑っているのだろう。怒っていない……わけでもなさそうである。だってどんどん腕を掴んでいる手の力が強くなってきていた。

「レオ、痛い、」
「というかなまえ知っている?アイツこども3人いるんだって!」
「え、」
「あと普通に奥さんともめっちゃ仲良しらしい!アイツの会社の社長の娘なんだってな!」
「え、え?待って、な、なんでレオがそんなこと、」
「知ってるのかって?アイツが土下座しながら全部ペラペラ喋ってきたから!」
「え」

情報が一気に流れてきて理解が追い付かない。レオは何だか高揚しているようで、いつもよりペラペラと話していた。それも、土下座って……。まるで彼に会ってきたみたいな口ぶりである。
私が固まっているのを確認したのか、レオはゆっくりと話し出した。

「……なぁなまえ〜。オレ部屋入りたい。良いでしょ?」
「え……と、」
「ダメ?」
「う、ううん。」
「もう行かない?」
「……うん。」

そう言うと、レオはどこか安心したような顔をし、そのまま私の部屋に入っていった。私も、レオの背中を見つめながら、彼の後を追う。広くないワンルームまでたどり着いた時、レオは私に微笑みかけ、口を開いた。

「座れ。」

先ほどとは打って変わって、冷たい声であった。
私はじっと、レオを見つめながらゴク、と唾を呑んだ。