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油断していたのだと思う。彼はこういうことに疎いのだと勝手に決めつけて、ただなんとなく寂しくなって、ほんの出来心だったのだけど、まぁここまでダラダラ言い訳じみたことを言っていたが、簡単に言うと浮気をしてしまったのだ。これは私が悪い。分かっている。ただ、彼も彼でひどいのだ。私と会う日でも、良い曲が思いついたらそれに熱中してしまうし、何日でも連絡が取れなくなって、ひどい時にはどこかへ失踪する。帰って来たと思えばごめんと一つも謝りもせずに作曲活動に勤しんでいる。さすがに私もイライラが募っていた。いい加減にしろよ。そう言いたかったが、彼の一生懸命な横顔に、私はいつも何も言うことができない。でも、ちょっとは構ってくれたって良いじゃないか。そう思っていた時に、私に優しくしてくれる人がいたため、私はその寂しさを埋めるためにその人と関係を持ってしまった。
それから早数ヶ月、彼氏であるレオは全く気づく気配も無かった。今日もいつもの通り私の家に来てご飯を食べ終わったかと思えば作曲活動を始めた。ただ、いつもと違ったのは彼が突然私の家に泊まりたいと言ってきたことである。いつもは彼がなんとなく家に来て、なんとなく泊まっていくのだ。許可を取ることなんてなかったのに、どういう風の吹きまわしなのだろうか、と不思議に思ったが、泊まるのはいつものことなので、その場では何も触れなかった。レオが泊まりに来た日の翌日は、浮気相手と会う日だったのを思い出したのは、その相手から連絡が来た瞬間であった。ああ、そういえば、と何となくレオに罪悪感を抱きつつ、明日の身支度をレオが寝静まった後に整える。お気に入りのワンピースをタンスの一番上に配置し、私も眠りについた。そう、寝る前までは何もなかったのだ。



「おはよう、なまえ。」



背後から声をかけられ、はっと我に返った。見ると、タンスの前で座り込んだ私に向かって、レオが微笑んでいた。カーテンから漏れる朝の日差しは、冬のせいでまだ弱い。時計は朝の6時半を指していた。レオがこんな早い時間に起きるなんて、とも思ったが、そんなことを深く考える余裕はない。手にジワリ、汗が滲む。

「お、はよ、う。」

私の手には、見るも無残に破られたワンピースが握られていたのだった。