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月神香耶side
竹中さんが凛刀、といういわゆる間節剣をふりかざすと、私の脇からうちの半兵衛君が飛び出してきて、羅針盤で振り下ろされるそれを防いだ。
目の前で火花が散り、私は思わずのけぞってしまう。
「香耶、さがって!」
得物を持ってない(だって作務衣に刀を差すとこが無い)私は、半兵衛君の足手まといでしかないため、いそいそとふたりから距離を取った。
伴太郎に拉致されたあの時と真逆だ。
ただ竹中さんの得物と微妙に相性の良くない半兵衛君はちょっと押され気味。
そのうえ新築の作業蔵を壊したくないって意識がある分こちらにハンデがある。
小上がりを降りて作業台まで下がった私は、まだ試作品でしかない春霞キセルを手に取った。
ふむ。これでやってみるか。
手の中でくるりと回せば、キセルはやはりきらきらと冷気を放ち手に馴染む。
私は自分を落ち着けるように一度深呼吸した。
「うわ!」
がん、と得物を打ち合わせる音と共に半兵衛君の身体が数歩退いた。
そのとき、追撃を仕掛ける竹中さんの利き手めがけ氷と風の婆娑羅が飛来する。
「な……っ!?」
婆娑羅を纏わせたキセルを持ち横合いから懐に飛び込む私は、彼にとっては不意打ち以外のなにものでもない。
竹中さんの得物がまるで吸い寄せられるように風に流れて体勢を崩した。
そして。
「教えてあげる!」
「!」
隙の出来た竹中さんに向かって、半兵衛君が無双秘奥儀を発動した。ガチすぎる。
うちの無双武将たちが持つ得物には、すべてに『風』の属性が付加してある。この無双の風という属性は、BASARAの風属性とはまったくの別物で、相手が防御していてもそれをものともせずガツガツヒットポイントを奪っていくという鬼のような属性なのだ。
しかも無双の彼ら自身がBASARAトリップ時にすでにレベル限界突破。乱世終わらせてるどころか遠呂智も真遠呂智も倒してる。くぐった死線の数が違う。
現に防御に徹しているはずの竹中さんも例外なくダメージを食らってあっという間に戦闘不能に陥った。
「ぐはっ!」
「これが戦だよ」
フィニッシュを決めた半兵衛君の表情はすっきりと晴れやかだった。
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