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月神香耶side



というわけで渡すもん渡したところで佐助君と別れました。

詳しく描写するほどのものでもないのだけど……佐助君は『明月』の忍び大型手裏剣をほくほくと懐に納めると、にっこり笑って「じゃ、お世話になりました」と消えたのである。

そう。消えた。
佐助君が忍者っぽいことするのを見たのは、あれが初めてだった。

で、それを見て今更気付いたんだけど、佐助君って……もしかして、信州真田に仕えた真田十勇士の猿飛佐助じゃね?

私には元の世界で培った歴史の知識に加え、戦国スタイリッシュアクションゲーム『戦国BASARA』に関する記憶もある。とはいえBASARAに関しては、覚えていることはそう多くない。蒼い衣装の伊達政宗と紅い衣装の真田幸村が激突するOPとか……印象的なキャラ(本多忠勝とかさ)のビジュアルを軽く覚えてたりするだけだ。

なんで最初、気付かなかったんだけど……猿飛佐助って主要キャラじゃなかったかい。佐助君はまだ子供だったけど、つまりあと数年すると真田に召し抱えられて、その後原作突入する、ということだ。

「あれ……私、もしかしなくても、順調に歴史介入の道を歩んでない……?」

これは一大事だ。




私たちは三週間滞在した宿を引き払い、もんもんとしながらも再び街道を歩く。
城下町を出、峠を越える直前に、私の名を呼ぶ懐かしい声が聞こえた。

「──香耶殿!!」

「え、」

この声は。
先を見据えると、安堵したように微笑む幸村君の姿があった。

「香耶殿、ご無事で何よりでございます」

「幸村君! 幸村君も元気そうで良かった!」

本当に。やっぱり顔見知りがいるのといないのとでは旅の安心感が違うね。

「でも幸村君が一番に迎えに来るとは思わなかったよ。最初は敬助君だと思ってたから」

「それが……指示通り小田原で皆を待っていたのですが、いくら経てども誰一人現れず……」

「まじでか!」

朝倉の襲撃があったときに皆バラバラになったらしい。真面目な幸村君は、あのあとまっすぐ小田原へと向かったのだが、他のみんなはそれぞれどこかで道草食ってるみたいだ。
おいおい、せめて自分たちで決めた約束事くらい守ろーぜみんな……まぁ上田に三週間留まった私が言えた義理じゃないけど。

と、そのとき風魔君がとんとんと私の肩を叩いた。

「え? どしたの風魔君」

「…………」

「は!? うちの半兵衛君を美濃で見たぁ!!?」



美濃。前述で触れなかったが、地理的には越前(福井県)朝倉と信州(長野県)真田の間にあるのが岐阜県中南部の美濃である。
美濃斎藤と言えば半兵衛君が一番最初に仕えていたところだよね……? 主君斎藤龍興が傲慢で、お灸をすえてやるために鉄壁の城(稲葉山城。のちの岐阜城)を十数名で制圧した話はもはや伝説である。

なに、里帰りでもしてるんだろうか?

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