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月神香耶side



上田城下は交通の要衝であることもあり、そこそこ大きな町だった。

血濡れの少年は拾った場所でおおかた応急処置を行い、宿場町まで風魔君に運んでもらった。

すぐさま宿を取り少年の服をひん剥いて容態を確認。
首や腹などきわどいところに切り傷、全身に打ち傷。両足片腕を骨折。なにがあった。

少年の目が覚めるまで数日寝ずに看病していると、楽しみにしていた城下町観光ができない私のために、風魔君が甘味などを買ってきてくれるようになった。なんだか警戒する野良猫が懐いてきてくれたみたいで感無量だ。



「…………」

「え? 婆娑羅者なの、この少年?」



どうやら婆娑羅持ちの者は驚異的に傷の治りが早いらしい。見たとこ羅刹ほどではないけど。

とにかく同じ婆娑羅者である風魔君の申告でこの少年が只者ではないと判明。
持ち物を検分すると、どうもこの少年は忍なんじゃないか、と。

なんだか、忍遭遇率が高いな。BASARAの世界。



峠を越えても寝たり起きたりしている少年を、(嫌がるのを押さえつけながら)いいかげん全身くまなく拭ってやる。
すると、なにかの植物で染め付けていたらしい彼の髪から色が落ちて、綺麗なオレンジ色の髪が現れたのだ。

「おぉー綺麗になったねぇ。なんか、一皮むけた感じしない?」

「……さっぱりはした、かな」

「柿食べたくなってきたー」

「ちょっと香耶。ひとの頭見てよだれ垂らさないの」

一仕事終えたご褒美をくれー! と少年に抱きついて、洗いたてでふわふわの髪に頬ずりする。
そのとき沐浴の片づけをしていた風魔君と少年との間で、なにやら火花が散っていたのには気付かなかった。

「香耶、香耶」

「え、なに? どうした少年」

「佐助って呼んで」

「さすけ? ……佐助?」

どうやら私は少年の名前を呼ぶことを許されたらしい。

彼の名を口にすると、今度は私が満足そうな佐助君にぽんぽんと頭を撫でられた。

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