私の休日は屋上から始まり屋上で終わる。
適当に食材を持ち込んでそこでただ一日をずっと空を見ながら過ごすのだ。
そして今日もまた太陽がだいぶ傾いていた。
「刹那」
「副長……?」
の視界に突然別の色が覗き見ながら入った。
副長だ。
「やっぱり此処に居たわね。予想通りだったわ」
「逆に私が此処以外にいる想像ができますか」
「不可能、ね」
副長は問題児を見て呆れた様に笑う。その苦笑も綺麗だなと思った。
「副長もオフだったんですか?」
「ええそうよ」
「そうですか。ところで、何の御用でしょうか」
自分から聞いたことをサラっと流したが咎めない。私かなり失礼な事しているなとは自覚している。
「たまには食事位一緒に行かない?」
正直戦慄した。
これは流石に失礼なのは百も承知だから言わないでいるが、副長の味覚は悍ましい。見てるこっちが胸やけする。確かに小豆は体に良いと昔テレビでやっていた気がするが、それでもあれは無い。
「……私はもう、食事は済ませておりますので」
遠回しに断ったつもりだったが効かなかった。
「栄養ドリンクは食事じゃないわ。さ、行くわよ」
「待って下さい副長!栄養を取るという点に置いてはこれも食事と同じに考えて良いはずです!だからホント、大丈夫ですから!」
「行くわよ」
「……ハイ」
そして強制連行された。普通にその綺麗な笑顔に負けました。
ゴウンゴウンとエレベーターを降りる。
屯所を出るのは久しぶりだと思った。
「副長、本日はどちらへ……」
「秘密よ」
「ええ……」
「その方が面白いでしょ?」
車椅子で見えないけど副長が楽しんでいるのはよく分かった。
腹を括るしかないのだと気づいた。
「そういえば、随分と髪が伸びてるわね。行きつけの店があるから今度一緒に美容院行かない?」
「そうですかね?特に気にした事はありませんでしたが、副長の行きつけなら是非……」
後ろで一つに纏めていた髪を触ってみるが、確かに肩までだったのが胸まで伸びていた。高く纏めてこれだ。おろしたら腰までの長さになるだろう。
「……いえ、やっぱり遠慮しておきます」
「そう?前髪も結構あるけど」
首を傾げる副長を見上げて言う。
「ピンをすれば平気です。この髪、気に入っているんです」
思い出したのだ。
私が髪を伸ばしていた理由を。
他愛ない一言でも、私が動く理由はこれだけだった。
エレベーターが止まる。これから行くのは天国か地獄か。