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(元)事情通の反乱
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「……ここは何処。私は誰。今は何時」

薄暗いビル群の路地裏。都会の喧騒も遠く、ぽつんぽつんと点在する心許ない電灯だけが足場を照らしている。

(突っ込まれないボケってのは悲しいものだねえ……)

ボケをかましても突っ込む人は誰もいないそこをかすがは歩いていた。

(……まずいな)

こうなったのは全て風宮の所為だと憤慨した。
前のページを読んで頂いた方はわかる様に、風宮はかすがを置いて勝手に札に戻った。風宮の風で帰ろうと思っていたかすがは唖然となった。
そして帰り道を覚えていなかったかすがはとりあえず勘に従って歩いていたら、こんな所に出てしまっていた。住宅街からビル街へ。彼女は自分の勘に酷く疑問を感じた。

(あいつ次出てきた時は一発ぶん殴ってやる)

そう心に誓ってかすがは路地裏を歩く。一刻も早くこの場所から離れたいのだが、いくら歩いても景色が変わらない。都会の嫌なところだ。帰るどころか遠ざかっている気しかしない。
沈む気持ちをなんとか抑えて歩く。

(なんかここ出そうだし……。いや出るよこれ絶対)

知らず知らずに妖怪のテリトリーに入ってしまったのかもしれない。さっきから微かに妖気がする。嫌な予感しかしない。それでも仕方ないからとりあえず気配だけは消して警戒を解かずに進んだ。

グチャッ……バキッ……。
はっきりとした妖気と共に、肉を潰した様な、骨を折る様な嫌な音がした。その瞬間かすがは式神を取り出して、既に消していた気配を更に消した。おそらくは妖怪が人間を食っているところだろう。叫び声が無いということは多分もう、手遅れだ。
ならば食べ終わって妖怪の気が緩んだ瞬間を狙わせて貰う。

「相変わらず……」

(何……!?)

妖気が増えた。しかもその辺の雑魚とは一線を画する程の妖気。

「“猫”を食うのが好きなネズミだな……。旧鼠」

(なんであいつが、こんなところに)

困惑するかすがを余所に二人は話を続けた。



(冗談はよしてよ……)

あの妖怪があんな人食い妖怪と繋がっているなんて、信じられなかったが目の前にあることが現実だ。
大した話はしていなかったが、片方はあの天下の奴良組の大幹部の一人だ。もしかしたら気づかれていたのかもしれない。
妖気が完全に消えてからやっと胸を撫で下ろせた。
残された人の血を見ながら考えを巡らす。それでもまだかすがの疑問は解けなかった。

「……草鬼」

構えたまま放置していた式神に霊力を込め、5体の膝丈サイズの草鬼を出す。
昔とは随分と変わったらしい今のこの町のことを自分は殆ど知らない。そしてこの町に滞在するのなら知らなければならないとも思う。

「探れ。今、この町で何が起きているのか」
「御意」

音も立てずに草鬼は消えた。おそらく明日の夕刻には情報を持って帰ってくるだろう。

(さて、あとの問題は……)

「どうやって帰ろう……」

夜はまだ長い。