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チュンチュン、と鳥の鳴き声が静かに響く。太陽は既に高く昇っており、照はぼんやりとカーテンから射す光を見ていた。

(夢……?)

体中の感覚が麻痺したような倦怠感に、動くことさえ躊躇われる。

(……夢、か。)

久しぶりに見た。昔の夢。嫌なことしか無かったが、この力があったから一言や狗朗に会えた。そう考えると悪い気はしなかった。

(そうだ、私は昨日の夜……。)



*



昨晩、照は星竜会もといヤクザに「絡まれた」。実際には明らかに襲撃だったが、照自身はあまり気にしていなかったが。しかし、このままでは日常生活に支障が出るかもしれないと思い、星竜会の壊滅を計画した。
そこで、襲った男に視覚寄生の能力を仕掛け、そいつらの事務所を探していたのだが、いつの間にか能力を発動したまま爆睡していたらしい。酷い倦怠感はそれの影響だろう。
頭は大分覚醒してきたが、体は相変わらずだ。おそらく、今日は動くのは無理だと判断し目を閉じる。場所は一応覚えた。せっかく確保した休日だが仕方ない、明日潰そうと決めて眠りに落ちた。

(……バイトと大学また休まなきゃなー……。)



*



「星竜会?」

ソファに寝転びながら、気怠そうに「赤の王」、周防尊は言った。

「ああ。またぽっと出の俺らが気に喰わんみたいな奴らやな。んで、そこにストレインもいるみたいで、若いのが何人かやられとる。」

吠舞羅は今急速に勢力を拡大している。それをやっかむ輩もやはりいて、それの襲撃や抗争も増えてきていた。今のところは全勝中に加え、そいつらが持っていた金をちょろまかしたりで、悪い訳ではなかったりした。
煙草を口にくわえ火を点けながら草薙は思い出したように付け加えた。

「あ、あと十束もな。」
「えへへ。」
「全治二ヶ月が何笑っとるねんアホ。だいたい、利き腕にヒビ入れて、日常生活はどないする気や。」
「へーき、へーき。何とかなるって!」

右腕と頭に包帯を巻きながらも明るく笑っている十束に草薙が呆れたように言うが、当の十束に反省の色は全くない。草薙自身もそれは諦めていることのため、ため息一つですませてしまった。
そんな中、ごそり、と ソファから周防が立ち上がる。

「アレ、キング今から行くの?」
「ああ」
「気をつけてね。結構あのストレイン、強そうだったよ。」
「誰に言ってんだ。」
「キング。俺らの王様、赤の王、でしょ。」
「……ハッ。」
「尊、晩飯いるか?」
「ああ。」

そうして周防尊は外へと出て行った。諦観とどうしようもなく生まれてくる僅かな淡い期待を胸にして。






数時間後、星竜会は壊滅。そしてその知らせはちょっとしたニュースとなり、翌日の朝には警察の一斉検挙によるものとして、報道されていた。これはーー東京都法務局戸籍課第四分室ーー通称セプター4が陰で表向きにとった措置であったが、それはまた別の話である。



20130526