爆風から始まる [ 3/12 ]
「死ね土方ぁぁぁ!!!」
ドゴォォン
「総悟ぉぉぉ!!!」
私の一日は爆風から始まる。冒頭のやり取りで察してもらえるだろうが、沖田さんが副長を抹殺しようとバズーカをぶっ飛ばしたことによるものだ。
(今日は壁は無事だったな……。)
私の部屋は副長の隣の為たまに壁に穴が開くことがある。心配所が違うと言われるかもしれないが、あまりにも日常に溶け込んでしまっていてもう何も感じない。慣れとは恐ろしいものだ。
布団を片付けていると、ふと机の上にある袋が目に入った。
その瞬間、私の胸が塞がった。
*
「いただきます。」
朝の鍛練を終えた食堂は隊士達で溢れていた。 私はいつも通りに副長の隣に席を確保し食事をとる。ちなみに向かいの席には沖田さんが座り、その隣が近藤さんだ。 相変わらず副長は犬のえ……ゴホン。……通常運転だ。
「土方さん。いい加減目の前で犬の餌食うのやめて下せぇ。食欲無くなるんで。」 「沖田さん、それは犬に失礼です。さすがに犬もあんなもん食えません。」 「あ、そうか。じゃあそんなもん食ってる土方さんは犬以下か。ってことでさっさと死ね土方。」 「沖田さん、殺るなら食事の後にしてください。血を見ながら食べるのは嫌です。」 「てめーら言いたい事はそれだけかぁぁぁ!!?つーか本音漏れてるんだよ中宮!!」
いけない、せっかく言葉を濁したのに、つい沖田さんのペースにハマってしまった。
「アハハハハ。何をおっしゃられますか副長。ところで、お話がありますので後でお時間よろしいですか?」 「それは構わねえが、どうした?」 「いえ、では私は部屋に戻りますね。……あと副長、沖田さんが山葵大量に入れてましたよ。ソレ。」 「辛ぇぇぇ!総悟ぉぉぉ表出ろぉぉぉ!!!!」
去り際にさらっと忠告したものの遅かったらしい。さっさと食べ終えた私は、もう常となった怒声を背中に唇に笑みを浮かべながら食堂を出た。
*
(楽しいなあ。)
パタン、と部屋の襖障子を閉め机の上の袋を見る。昨日病院から貰ってきた薬だ。
(飲もう。)
この薬を飲めば、私は自分の体が病に侵されていることを認めざるを得なくなる。 それでも、飲めば少しは生きながらえるかもしれない。
私は諦めがいいのか悪いのかわからない。けれど、この爆風から始まる日常を簡単に諦めるなんてできなかった。
持って来たペットボトルのお茶を湯呑みに注ぎ、袋から薬を出す。粉薬一袋と錠剤が数錠。
「げっ……。」
苦手な粉薬の存在に顔色を悪くしたが我慢だ。良薬は口苦し。偉大な先人達の言葉を信じようではないか。
「ぅげぇっ……にっがぁ……。」
錠剤の次に飲んだ粉薬は苦かった。今度からは絶対にオブラート使おう。絶対にだ。
「おぇ……っ。」
吐いてはない。薬が変な所に入っただけで、吐いてはいない。残りのお茶を一気に飲み込んだら何とか落ち着いた。
「ふう……。」
(有休を取ろう。)
あと残りの一ヶ月。仕事一筋だった私なら大量に休みは余っているはずだ。未練なんて残したくない。死んだらさっさと成仏してやる。
一ヶ月後、有休を使い果たしたらまた、仕事に復帰しよう。 ソレまで思う存分楽しもう。
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