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最近鎮目町にできた新しいカフェ。その店の奥の席に2人はいた。

「こうして2人で話すというのは、初めてかな?」
「...そう、っすね。」

明らかに緊張しているといった八田に照は苦笑する。

八田は最近吠舞羅に入った少年だ。どうやらあまり女に慣れていないらしく、ガチガチに固まっている。

「そんなに緊張しなくてもいいよ?ここのお代は私が出すし。」
「...そう、っすね。」
(ダメだこりゃ。)

何故この2人がここにいるのか、話は数時間程前に遡る。




「誕生日?」
「そ、今日なんだ。それで、サプライズパーティーしようってことになって。」

早朝に突然かかってきた十束からの電話に、ベッドの中で寝ぼけた頭を起こしながら話す。突然なのはいつものことなので、照はもう慣れていた。

「へー。んじゃ明日なんか持ってくわ。今日はムリ。八田君にはゴメンって言っといて。」
「なんで?」
「午後からバイト。」
「ならいいじゃん。来なよ。」
「良くねえよ。何言ってんだ。」
「照よくバイト休んでHOMRAに来てるじゃんか。」
「そうだよ。そのおかげで今月あと1回休んだらクビなんだよ。」
「...ホントに?」
「イエス。」

照の脳裏にそれを告げた時のバイト先の店長の顔が蘇る。アレは冗談などではなかった。

「じゃあさ!パーティーの用意できるまでの八田の足止めだけでいいからお願い!」
「話聞いてた?」
「午前中だけでいいから!ね!!」
「...ハア。」
「ありがとう照!!」
「やるなんて一言も言っないよ...」

ため息を了承ととったのか、十束のその声に更にため息が出た。
しかし、いまさら断る気力も起きなかった。
そして冒頭に戻る。




「...」
「...」

騒がしい店内に落ちる沈黙。八田には普段の明るい雰囲気はどこにもなく、2人とも気まずさに浸ってしまっていた。

(まずいな。完全に店のチョイスを間違えた。)

照達がいるのは、先日オープンしたばかりの小洒落た店だ。周りは若い女性客ばかりで、照は気に入ったが、八田は完全に畏縮してしまっている。今更ながら彼女は「まだ行ったことなかったから」という安易な理由による自分の判断を後悔していた。

(...まだデザート食べてないのにな)

今度は女の子と一緒に来よう、と思いながら、ガタリ、と音をたて照は椅子から腰をあげる。それと同時に八田もビクリと反応するが、気にしない。

「HOMRA行くか!」

勿論ここの会計は彼女が持った。



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