×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




現在4月9日23時59分。4月10日まであと1分。

あと30秒。

あと20秒。

あと10秒。

あと5秒。

あと3秒。

2。

1。

照は端末を取り出し、とある番号へコールした。

「天海ちゃんか?」
「こんばんは草薙さん。遅くにごめんなさい。」
「なんやどしたん?」
「草薙さん、今日誕生日じゃないですか。」
「ん...ああ、そうやな、知ってたん?」
「多々良君から聞きました。草薙さん、忘れてましたね?」
「...歳とると色々と忘れっぽくなるもんやで。」
「フォローになってませんよ。」

声を聞くだけで自然と口角が上がってしまう。ちなみにこの情報は十束から聞かなかったら全く知らなかったものだ。今度彼に何か奢ろう、と思った。

「そんな訳で、何がほしいですか?」
「そこは普通サプライズとちゃうか?」

草薙が苦笑しながら言うのがわかった。

「私自身ならいつでも差し上げるのですが。」
「止めい。」
「...草薙さんが喜んでくれるものが思い付かなかったんです。」
「......」

会話が途切れる。突然訪れた沈黙に若干の気まずさを照は感じた。

「天海ちゃん。」
「はっはい。」

その沈黙を草薙の声が破った。

「そんなに言うんやったら、これから俺のこと名前で呼びい。」
「...え?」
「その代わり、俺も天海ちゃんのこと名前で呼ぶで。」

いきなりのことに脳が追いついていない。必死に電話口からの言葉の意味を汲もうとする。

「あの、それは、プレゼントでは、ない、気が...」
「俺がええ言ってるんやからええよ。それに十束や尊は名前やん。照は俺のこと呼びたくないんか?」
「そんなことないです!」

耳元で名前で呼ばれたような錯覚に赤面する。
草薙が電話の向こう笑った気がした。

「じゃあこれからはこれで。」
「あの、草薙さん!」
「...」
「...い、出雲、さん」
「なんや?」
「HappyBirthday」
「ん、ありがとうな」
「では、おやすみなさい。」
「おやすみ」

照は電話を切った。

「〜っ」

クッションに顔を埋める。赤面したことも出雲さんにはお見通しなのかな。そんなことを考える。しかしそれならこの思いも見通してほしい。
テーブルの上のラッピングされた袋をみる。思い付かなかったのは本当だが、一応プレゼントはクッキーを作っていた。正直料理は得意な方だが、草薙の前ではそれも霞む。

「...会いたいな」

小さな声で囁いたつもりだったが、誰もいない部屋では良く響いた。
昼になったらHOMRAに行こう。多々良君がきっとパーティー的なことをしているはずだ。その時にどさくさに紛れて渡しちゃおう。食べてくれるかな、甘さは控えたし、失敗はしていないはず。

「...出雲さん」

つい先刻許された呼び方。ずっとそれで呼びたかったし、凄く嬉しかった。しかしこれは私がプレゼントを貰った気分だ。
ギュッとクッションを強く握る。明日、渡して言うんだ。さっきも言ったけど、直接言いたいんだ。

「寝よ」

緩む頬を抑えながら照は眠りについた。




20130410
20130811 修正
next