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へし切長谷部


主が恋人が欲しいと言い出した。困った。とても困った。物なら何軒でも万屋を駆け回り献上しよう。新刀剣男士なら幾らでも周回するし、依頼札の遠征も行こう。だがしかし、主は人が欲しいと言ったのだ。
「どうする薬研」
「そういや主ってまず他の審神者と俺ら以外と喋ったことすらなくないか?」
「やめろ言うな」
「恋人の前にまずちゃんと会話が成立する相手を見つけないとな…」
「貴方でいいんじゃないですか」
横でだらだらしていた宗三が声を出す。
「別に恋人を人間限定といったわけではないでしょう?」
「その屁理屈で主の命を遂行できるなら、明石の練度は未だに壱だ」
「期待した癖に」
「まずは演練先の審神者に声をかけるのが第一だな。独身男性審神者のリストアップだ」
「ちょっとシカトしないでくれます?」
「だが長谷部。うちの主は同業とでも事務報告が精一杯なんだぜ?無理だろう。宗三の言う通り俺らの中で見繕うのも手っ取り早くてありなんじゃないか?」
「馬鹿なことを」
馬鹿馬鹿しくなって部屋を出た。襖を閉める時に妙に大きい音がした。
午後の演練担当に自分は入っていただろうか。確認した。入っていた。好都合、と思いつつ、下げ渡された時の悲しみと怒りと絶望が限りなく薄くなって胸の奥底で相槌を打っていた。
「あのお馬鹿、演練で婿探しできると思います?」
「宗三の旦那はどう思うんだ?」
「主の命令を遂行できなかったとか言って喚いて帰ってくるに日本号の酒一瓶」
「おっ、じゃあ俺は主に相応しい男がいないとか言って帰ってくるに不動の甘酒5本」
「久しぶりに織田会でも開きますか」
長谷部のいなくなった部屋でそんな会話があったことを彼は知らない。


映画見て刀剣熱再熱です。
ツイッターで喪女の審神者が一度くらいキスしたいと言い出したみたいなツイートを見て書きました。
薬研の大将呼びは審神者の前だけで仲間の前では主呼びだととっても萌えるなあと思います。

超絶久しぶりの更新です。
よろしくお願いします。
2019/01/26 02:00