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芥虫審神者の着任


「突然ですが、貴女には審神者になって頂きます」

ある日突然、何の前触れも無く、私は審神者になった。



「埴輪?」
「審神者です」

室長室。
鈍器の様な書類を渡され呆然とする私を他所に室長はいつも通りパズルをしながら口を動かす。

「審神者ってあれですか。古墳時代に作られた薄焼きの」
「審神者です。現実を見て下さい」
「無理です」

渡された書類の表紙には『ブラック本丸対策室候補生の為の審神者マニュアル』と書いてある。もうこの時点で嫌な予感しかしない。最初の部分が要らなかった。ブラック本丸て。無理だよ。この部分さえなければまだ考えた。いや無くても考えないわ嫌な予感しかしない。



審神者(さにわ)とは、古代の神道の祭祀において神託を受け、神意を解釈して伝える者のことである。後には祭祀の際に琴を弾く者を指すようにもなった。
「さにわ」(歴史的仮名遣いでは「さには」)は、元は「清庭」(さやにわ)の意味で、神祭り神託を受けるために忌み清めた庭(場所)のことを指したとする説が有力である。
(Wikipediaより参照)



と、一応Wikiには書いてあるが室長がいう審神者とは当然この意ではない。
現在セプター4内で噂になりまくってるあれだ。

「室長、一応お聞きしますが、この審神者って」
「ええ、歴史修正主義者と戦う為に刀剣男士を呼び出すアレです」
「……デスヨネー」

分かっていても室長にWikiの音読を期待したのは悪くないと思う。しかし私はただの庶務課の人間だ。何で現場に行かなきゃいけないんだ。本来なら会議室でお茶汲みという名の雑用係りをするモブAなんだよ私は。

「お言葉ですが室長、私達セプター4の仕事はストレインの犯罪者の摘発です。何故私が」
「歴史修正主義者の中にストレインがいると言ったら、納得して貰えますか」
「!」

息を飲んだ。
ただでさえ異能持ちで厄介なのが時間という壁までも超えやがったのか。
私達の仕事の対象になるようなストレインが時間を遡る力を得て起きるのはどうせ碌な事ではない。小石ひとつ蹴飛ばしただけで未来が変わることもあるのだ。危険過ぎる。

「理解はしました。ですが、何故私なんですか。特務隊でもない、ただの庶務課の私が」

私に戦闘能力なんてものは備わっていない。雑用係りなら自信はあるが、この仕事にそれが大きく関わるとも思えない。ストレインの捕獲ならますます特務隊の仕事ではないのか。

「貴女の能力が適任だと判断しました」
「私の能力が必要になる現場ということですか」
「貴女の芥虫の様な生命力なら大丈夫です。どうです、いっその事、審神者名は芥虫にしますか」
「室長、私だって芥虫が黒い悪魔の古称だって知ってるんですからね」
「冗談です。兎に角、仕事の件、了承して頂けますね」

室長の冗談によって緩んだ筈の空気は室長によって引き締められた。

「……了解しました。失礼します」
「ああ、待ってください、これを渡すのを忘れていました」

部屋から出ようとした私に室長が近づいてきて、一切れのメモを渡した。
室長に似つかわしくない走り書き(と言っても十分達筆)のそれにはアルファベットと数字の羅列が書いてある。

「……これは」

内容を理解した瞬間、私は声を顰める。身長の関係で見上げた室長は有無を言わさぬ為の笑顔で口を開く。

「では、頑張って下さい」
「……失礼します」

結局、私に拒否権なんてものは無かったらしい。使う気も無いが。
室長の命令とあらば何処へでも行きますよ。
それが例え地獄だとしても。






まだ刀剣乱舞の面影があったと思う第一話
ここから室長の本丸に突撃したりなぜか紫ちゃんが三日月一振りを携えて圧樫山にいたりしたんだけど、刀剣たちの影が薄くなりすぎて没になった。
けどせっかく書いたから、と第一話だけお披露目。続かないです。

2015/10/17 14:14