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宗像


湿ったアスファルトを踏み歩く。雨の降っていた昼間の名残か朧月が静かに地上を見つめていた。ヒラリ、下を向いていた彼女の下にひとひらの花弁が落ちた。「夜桜というのもなかなか粋なものですね」「……室、長?」振り向いた先には彼女の王がいた。何故此処に、そんな彼女の疑問を余所に宗像は彼女の横まで行きそして追い越す。「室長、待ってくださ……」声は途中で途切れた。水溜まりの窪みに転けたから。悲鳴を上げられる間もなく彼女は宗像の腕に支えられていた。「あ、ありがとうございます……」見上げた彼は月光と桜を背負っていて、綺麗だと、ただそう思った。「気をつけなさい」軽く呆れた様に笑う宗像に彼女は今の自分の状態を気づかされた。「もっ申し訳、ありませっ!?」また途切れた。いや今度は途切れさせられた、が正解だ。目の前に彼の顔があり、唇に何かが触れる感触がした。一瞬だった。状況を理解した頃には宗像は既に前を歩き出していた。それで良かったと思う。耳まで赤くなった顔を見られずに済んだから。

2014/04/01 03:28