下にいくほど新しい
特別だとか思わないでね(丸井)
「これがなっちゃんに貰ったやつで、これがのんちゃんに貰ったやつ」
「……あんた、なんでホワイトデーまで貰ってんの」
私の幼馴染のお菓子好きは今に始まった事でもないが、バレンタインだけでなく何故かホワイトデーにまで、大量のお菓子を貰ってくるというのが、なんとも不思議である。
聞いた話に寄れば、友チョコにもホワイトデーとやらは存在するらしく、そのおこぼれに預かったらしい。皆、ブン太に甘いなぁ。
「で?」
「はぁ?」
「お前、なんかホワイトデーに作ってねぇの」
「作ってねぇよ。むしろ私、ブン太にバレンタインあげたのに、お返しもらってないけども」
え、そうだっけ。なんてキョトン顔で言いやがるブン太に、別に期待してなかったけど、と言い返してやる。うそ、ホントはすごく期待してた。バレンタイン渡すのも、どんだけ恥ずかしかったと思ってるの。どれだけ愛情籠めたと思ってるの。ブン太の馬鹿、馬鹿馬鹿!
「……なに、泣きそうな顔してんだよ」
「してない」
「ホントは欲しかったんだろぃ?」
「いらない」
「まじ?じゃあこれ、誰かにあげちゃおっかな〜」
私の目の前に出されたのは、映画のチケットだった。前から私が観たいって言ってたの、覚えててくれたのかな。だけど、一旦怒ってしまったからにはすぐに素直になる事もできない。あげちゃえば、とそっぽを向けば、ブン太が「ホントにいいのか?」と笑うのが聞こえた。むかつく、くやしい。
「俺、ホワイトデーのお返し全然してねぇんだよな」
「……毎年の事じゃない」
「だから、3年間ずっとチョコくれてた子と一緒に行けば、喜ぶだろうな。どう思う?」
「知らない。あげればいいんじゃないの」
うそ、やだやだあげないで。私にちょうだい。私と一緒に行って。私が一番、ブン太の事好きだよ。負けないよ。可愛い言葉は全部胸の中だけで、口から出るのは全然可愛くない言葉。もうやだ、私の馬鹿。
「じゃあ、やる」
再び目の前に出された映画のチケット。びっくりしてブン太に振り向けば、ブン太は愉快そうに笑っていた。
「3年間ずっとくれてるのなんて、お前しかいないだろぃ。気付けよ、馬鹿」
「…う、っさい、馬鹿っ……」
「あーもう、柄じゃねぇ事させんなっつうの」
抱き締められて、思わず泣いてしまいそうになるのを堪える。
「別に、ブン太にだけあげてたわけじゃ、ないもん」
「あっそ」
「ばか、ほんとにばか」
「はいはい」
私は泣いてるのにブン太がやけに嬉しそうに微笑むから、なんだか腹が立ってぎゅうって抱き締め返してやった。また、耳元でブン太の笑い声が聞こえた。