下にいくほど新しい
理由なんてものは(柳)
「や、やだ!返して!」
「誰だ、この男は」
「部活の後輩!」
生まれて初めて貰った所謂ラブレター、というやつを、何故か柳くんに取り上げられた。そしていくつもの質疑を繰り返しているのだけど、まだ柳くんは手紙を返してくれない。しかも挙げ句の果てには、ビリビリと破ってしまったではないか!あまりの出来事に唖然とする私に、なんだ、と平然と問い掛けてくる柳くんの、思考回路が分からない。嬉しかったのに。告白を受ける受けないは別として、本当に嬉しかったのだ。
「ひどい!最低!」
「うるさい」
「うるさくない!柳くんホントに最低、柳くんの馬鹿!」
馬鹿は言い過ぎたのか、柳くんに頭をがしりと掴まれてしまった。思わずごめんなさい、と謝れば「馬鹿はお前だろう」と柳くんが静かに呟いた。
「他の男に言い寄られて、喜ぶな」
「他の男、って」
「俺以外の男に決まってるだろう」
「柳くんなら、いいの?」
そう問えば、柳くんは首を縦に振って肯定した。
「別に付き合ってるわけでもないのに?」
「なら付き合うか?」
「えっ!?」
「そうだな、いっそ付き合ってしまえば面倒事も減るか」
なにを、言ってるんだろう。柳くん頭が良すぎておかしくなっちゃったのかなぁ。不思議そうに柳くんを見つめていると、どうだ、と言われた。いや、そんな事言われても。
「なんで私と柳くんが付き合う話になったの?」
「面倒事が減るからだ」
「いや、そうじゃなくて」
「根本的な話か?お前が好きだからだが?」
「えっ」
他に何がある、と当たり前のように言われて、ですよねぇと答えるしかなかった。そうか、柳くん私の事が好きなんだ。そっかそっか……。
「えっ」
「なんだ、まだ何かあるのか」
「本気?」
「俺はこういった冗談は言わないな」
「……はあ」
なんか、あまりの超展開についていけない。部活の後輩になんてお返事しよう。彼氏ができました、かな。君のお陰でよくわからないけど彼氏が出来たので、ってなんか可笑しな文章だよなぁ。でもホントの事なんだもん。
目の前で精市達に報告しないとな、と機嫌良さそうに笑っている彼が、私の彼氏になるらしい。なんだか実感が湧かなくて、柳くん、と名前を呼んでみれば優しく微笑んで「どうした?」と返してくれる柳くんに、おおこれはアリだな、と今更ながらに思ったのだった。