キャプテン
  




「そういや、まだだったけど……キャプテンどうする?」磯崎のその一言で今日の予定は当初のそれとはずれてキャプテン決めになってしまったのだ。万能坂に送り込まれたとき、万能坂の部員たちは全員シードを受け入れ従うと頷いたので、じゃあシードでキャプテンを決めてしまったほうが示しもつくだろう。ということで、シードの中からキャプテンを決めることになったのだった。実際、(例外もあるが)多くの学校はシードがキャプテンを務めている。篠山は渋い顔をして磯崎に対し「お前、やれば?」と髪の奥から覗かせている瞳を伏せた。どうやら、彼はやりたくないようだ。



しかし、磯崎もそれには反論し噛みついた。「はぁ?!ふざけんな!俺は化身、出せねぇんだぞ!それに一年だし!おい、光良!」そういって唯一、一学年上の光良をその鋭い瞳を向けた。光良も自分に来るとは思っていなかったのか大きな瞳をまん丸くして「え、おれー?」と顔を曇らせた。「お、おい……磯崎、光良は無理なんじゃ……それに化身とか関係ないだろ」「あはっ、あはははははははははは!ねぇねぇ!キャプテンってなーに?」どうやら、今一つ話の全貌を掴めていないようだったので磯崎が軽く説明をしてやる。「つまり、このチームの一番偉いやつ……代表みたいなもんだ」単純な説明だったが、取り敢えずなんか責任が重そうで面倒くさそう……っていうのは伝わったらしく、やりたくない……と瞳を歪めた。それは、不機嫌そうともとれる何とも言えない表情だった。「ふぅーん。俺そーいうのいーや……あっ!俺やるやるゥ!」「お、本当か?」



磯崎もこれで一件落着だ、とほっと息を吐いたところで篠山が慌てて止めた。「待て待て。光良、お前今なんでやるとか言った?」「え?だって、キャプテンって偉いんだろー?俺がキャプテンになったらー、明日から朝練は無しにするんだぁ!ひゃははっはは!」篠山は大きな岩を頭にぶつけられたかのような衝撃を受けて、頭を抱え込んだ。光良にキャプテンは無理だ、と磯崎に再度に訴えかけるよう一度磯崎を一瞥して光良に視線を戻す。「ろ、ろくでもない……!それは監督が決めることであって、キャプテンが決めることじゃないんだぞ」自分よりもはるかに幼い子供に、言い聞かせるように努めて穏やかに教える。「えー、じゃあ、やんなーい!お前ら勝手にやれば!」どうやら、光良はキャプテンになれば自由にそういうのを決められると思い込んでいたようで詰まらなさそうに口を尖らせて。やんない!と言って口籠った。こうなってはもう光良を誰も説得できないということを知っているので二人そろって溜息を吐いた。



「じゃあ、お前やれよ。篠山」「は?俺?」消去法で、キャプテンの座が篠山に巡ってきた。だが、しかし彼の意見は先ほどと変わらず一貫しており「やりたくない」と首を横に振った。何故だと磯崎が強く問いかければ申し訳なさそうに口を開く。「……いや、俺キャプテンとかいう柄じゃないし……どっちかっていうと、そういう目立つこともやりたくないっていうか……」「おまっ、一年でしかも化身出せない俺にキャプテンやれってか!」化身が出せないをやたらに強調してくるあたり、少なからずコンプレックスを抱いているようだった。「光良は論外だし。実質、俺とお前かの二択だろ……なあ、いそざ……いや、キャプテン」「!」



キャプテン、それは魅惑のワードだった。磯崎が少なからず胸を躍らせる。それを見た篠山がもしかしてこれはいけるんじゃ……?という疑惑が沸いたのだ。「光良も、俺じゃなくて磯崎の方がキャプテン向いていると思うよな?」光良には篠山の考えなんてさっぱり読めないが、もうその話に興味がない上にどうでもよかったので「そーかもなァ、あはは!」と適当に同調した。磯崎は満更でもないのか、照れたように口元を緩めている。「そ、そうか……?」「そうだよ。お前にしか務まらない。な、光良?」「うん、この話早く終わろうよ。俺あきたー」磯崎の顔が明るくなったのを見て、疑惑は確信へと変わった。篠山の分厚い唇が弧を描いた。「よ、よし!そ、そこまでいうならしょうがねーなぁ!俺がやってやるよ」おだてに乗りやすいなぁ、と篠山が苦笑したのには気が付かない。



・・・・・・・
なんで一年で化身が出せない磯崎がキャプテンなんだろうって思って書いた。こんなやり取りあったら可愛いなぁ。でも、考えたら篠山も光良もキャプテンには向いていなさそうって思った。でも毒島含める4人はスタメンだったりして。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -