僕の向こう側にすむ人
  



ルデゥスに、お洋服をお願いした。その際に体を図られたのだが。それにしても今日も出来ていないのだろうか?「ルデゥス〜。頼んでいた服は出来た?」あの可愛らしい服はこの南国の様なルルココ村では涼しげで、色もカラフルで鮮やかだからきっと気に入る。なのに、ルデゥスと来たら困ったように頭をちょっとだけ掻いて「いや、マダなんダ」なんて昨日と同じセリフを一言一句間違えないで言ってのけた。一日もあれば仕上がるなんて話は何処に行った。とジト目で睥睨してやれば、狼狽したルデゥスが済まない!と謝った。何でそんなに時間かかるのだろうか。若しかしてルデゥスは職人気質で、時間かかるのかな?だとしたら急かしてしまうのは申し訳ない、か。



別に、他意が有ったわけではないし、悪意があったわけではない。ただ、必要だったから図っただけだ。でも、それによって、好きな女のスリーサイズを必然的に知ってしまうわけで。悶々とした日々を過ごしている。俺が邪な気持ちで作った服に袖を通すのかと思うと少しだけ罪悪感が沸く。悲しいかな、男と言う生き物は惚れた女には弱いのだ。もうそそろそろ作ってやらないとあの悲しそうな眼には勝てそうもない。いい加減作ってやろう。そう思い、針と布を手にして器用に針に糸を通し必要なだけ出して、尖った歯で噛み切った。



漸く出来た、それは他の住人の分も作っているだけあって、見栄えはまあ、いいものだった。「しかし……名前ノ……」そこまで考えて、ぶんぶんと顔を横に振って振り払った。名前が今日も取りに来た。「ルデゥス」「アア、出来ていル」「えっ?!」驚いた様にそれを受け取りはにかんだ。嬉しそうに有難うと礼を述べて、牧場へとかけていった。それから暫くして、その服に着替えた名前が戻ってきた。「どう?ルデゥス」「アア、似合っていルゾ」そういうと目を細めて破顔した。「あのね、この服着ているとルルココ村の住人の一人に成れたみたいで嬉しいの。ルデゥスとも一緒に居ても違和感ないかなって!だから、嬉しくて。ルデゥスに一番に見せたかったの!」「!」そんなの着なくてもお前はルルココ村に溶け込む太陽の様な存在で温かくて……。ああ、俺、こんなにこいつのこと好きなんだな。妹分としてじゃなく。


Title 彗星

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