I LOVE YOU
  



(牧場物語/ティグレ)



子供だけが貰えるかぼちゃ祭りで一人解せぬと言う顔をしたままプリンを持つティグレ。明らかな、好意で貰った物なのだが。まだまだ、自分は子供だと言われている気がして何だか貰ったプリンも素直に喜べなかった。そして、あろうことか意中の相手である、彼女に悪態をついてしまったのである。「子供扱いはやめてくださイ」と。それでも最終的に彼女は大人にも配っているんだという事を聞かされて、解せなかったがうまく自分の中で反芻し、咀嚼することが出来た。このプリンは彼女の手製のもので牧場の牛と鶏から取れたての、牛乳と卵を使って出来た物らしかった。「ン、おいしいでス。流石名前サン」料理は手慣れているのだろう。何せ彼女は一人暮らしなのだから。といってもティグレだって、料理をたまに任されているから下手とは自分では思っていなかった。



「あはは、ティグレ君に褒められると何だか、嬉しいなぁ」「何故でス?」未だにプリンを頬張ったティグレが至福の時だと言わんばかりに頬を緩めて、プリンを嚥下している。「そりゃぁ、ね。こんなに幸せそうに食べてくれるし」「!」しまった、迂闊だったと言わんばかりに食んでいた、スプーンから手を離して「だかラ、子供扱いハ……」「ごめんね?」そうは言っているけれども彼女の言動行動、全てがティグレを子供扱いしていた。それが気に食わないティグレはスプーンをいよいよ置いてしまった。そして、椅子から立ち上がり向き直る。名前とその美しい薄紫色の瞳に射抜かれる。



「オレの事、いつまでも子供ダト思っていたラ、大変な目に遭いますヨ」背伸びしたティグレの吐息が耳元にかかってくすぐったくて身を捩りながら、逃げると腰をグイと掴まれて名前の頬に口付けた。とても、幼い子供が親愛の情を示すのよりかは少しばかり大人びていたが、そんなの関係なかった。名前は耳まで真っ赤にして、悲鳴を殺してその場に屹立して動けなくなって数度口を開けて何かを言おうとする動作を、繰り返したがそれは無駄な行為に終わった。直ぐにティグレの好戦的な瞳と交わったのだから。



「明日カラ、覚悟しておいてくださいネ、名前サン、」その言葉に弾かれたように、逃げ出した名前は言い訳に他の子供にまだ配らないといけないから!と言ったが、どうにもただの捨て台詞にしか聞こえなかった。ティグレはその様子に脈はあるのか、とクスクス忍んだように笑った。そこでようやく事の成り行きを知らない、祖父のハルバがやってきて「かぼちゃ祭りは、楽しいかイ?」と尋ねてきたので「エエ、とってモ」と言って残っていたプリンをまた食べ始めた。



Title デコヤ

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