ちょこれーと・ぱにっく
  



(おそ松さん/一松)


名前からチョコレートを貰った。猫にあげるわけにもいかないし、自分で食べることにしたのだが、密かに名前に想いを寄せている自分には、他の兄弟にもあげたという事実はとても苦しい事実であった。まぁ、やっぱり俺みたいなゴミに想いを寄せてくれるわけなんかないというわけである意味清々しい気分にすらさせてくれるのだから凄い。皆貰っているという事は、何の躊躇いも無く堂々と隠れずに、リビングで食べられるという事だ。残念な義理チョコでも、こういう時は有難いなと思いつつ、名前と別れ行くあても無いのでそのまま直帰の俺。



他の兄弟が名前ちゃんからチョコ貰ったー!と騒いでいた。皆義理なのによくそこまで喜べるよな「ああ、名前さんからのチョコっ、僕勿体なくて食べられない!」「えー、こんなに美味しいのに勿体ないよ。食べなよ、チョロ松〜」ポリポリという音がリビングで木霊する。皆美味しそうに市販のチョコレートを食べているので、俺もあまり好きな方ではないが、食べるかと包みを丁寧に解く。貰えるだけ、いいじゃないか、と自分に言い聞かせて。中身を見る。中には生チョコレートが入っていた。あれ?でも兄弟たちはぱりぱり音を響かせて食べていたような?と首をかしげてしまった。



「どうしたんだ。一松、名前から貰ったんだろう?俺にはわかるんだぜ」ウザいのが来た。俺は真相が未だにつかめなくて怪訝そうな顔をしながらそれを隠そうとしたが一歩、遅かった。見られてしまった。「!?」「どうしたの、カラ松兄さん」「い、いや……俺たち兄弟の中にまさかの伏兵がいたのだなと……」「いや、そんな説明じゃわからないから!」トド松は思案するような仕草を取って、口元に手を当てている。そして、カラ松の言葉を反芻し咀嚼したのだろう。「まさか……一松兄さん」「……、」「本命チョコ?!」



そこからは兄弟から質問攻めにあって仕方なかった。俺のチョコレートだけが何故か市販の物ではなく手作りで、しかも、他の兄弟のは市販の物だと気付いたとき、俺は次に名前に逢った時にどんな顔をして、どんな仕草をして逢えばいいのかわからなくなった。チョコレートの味は甘かったのか苦かったのかよく思い出せないのは全て、名前のせいだ。

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