1mmだって近付きたいの
  



(おそ松さん/一松)


一松は私の幼馴染で猫好きである。今日も私の飼っている猫に逢いに私の家に訪れてはじゃれて遊んでいる。猫もすっかり一松に懐いていて、すりすりとその体躯を足元に擦り付けて心を許している。その間の私と一松に関しては会話は一切なし、私の存在理由は無に等しい、ただ猫の飼い主だから一応そばにいるだけといった感じである。なんて虚しいんだろう、これでも一応幼馴染で旧知の仲なのに。いつのまにかおしゃべりだった、一松は年を重ねるにつれ、無口に成って行って何処か怪しい雰囲気を纏うように成った。まさか、無職のままずっと家に居るとは思っていなかったけれど、一松の事を昔から好きだった私は何だか猫に嫉妬である。



「にゃー」「……」じっと視線を送ってみる。少しくらい飼い主にも構ってくれてもいいじゃないか、たまには一松の話だって聞いてみたいし(どんなくだらないことでもいいから)、お喋りとかしてみたい。「一松、たまにはお喋りしようよ」「は?」「だって、いつも猫にばっかり構っていて、最近の一松の状況とかわからないし、他の兄弟は元気?」怪訝そうな一松は「あー。俺含めて皆、屑ニート」とだけ言ってまた猫とじゃれはじめた。他の兄弟の事をそれだけで片付けてしまう一松は一松らしいと言えばらしいのだけど、いくらなんでも屑ニートはないだろう。



「一松、自虐はよくないよ」「本当の事だし」私には視線を一切向けないでこたえる。「ねぇ、一松ってば」「何?俺面白い話題ないし、底辺と喋るとゴミが移るよ」もういいや、玉砕覚悟で告白しよう。一松は猫が好きで遊びに来ているだけだろうけど、私はこれからも愛猫に嫉妬しなければならないと思うと心苦しくて仕方ない。「好き……、」「は?」一松が撫でていた手を止めてようやくこちらを見た。その目はまん丸くいつもはジト目なのに見開いていて、思考回路を停止させているようだった。ようやく、思考が回りだしたのか、ジト目に戻って。「何の冗談」「冗談で言えるわけないじゃん」「じゃぁ、俺も言うけど、猫の為だけに女の家に通い詰めるほど馬鹿じゃない」


Title Mr.RUSSO

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