雅野




学校で雅野と出会っての開口一番がこれだった。「ああ、お早うございます。先輩、チョコなんて持ってきていませんよね?校則違反ですからね」御門ならあの堅物ぶりからしてそんなこと言うのはわからないでもなかったのだけど、まさか、後輩の雅野からこんなこと言われると思っていなくて私は少しショックを受けていた。冷たそうに見えるかに君はこう見えても、普段は私に懐いてきてくれる可愛い後輩だったりする。ただ、今日は機嫌がとても悪いのか、こんなにそっけないのだが。というか、雅野はそんなに校則を順守するような人間だったけか?と隣をたまたま、道で出会って一緒に登校し歩いていた御門と首を傾げた。



「雅野にああやって、釘を刺されたけど」実は結構持ってきていたりする。普段お世話に成っている人と、本命である雅野へのチョコ。でも、このまま他の人に渡すと絶対、雅野に軽蔑されるような気がする。「あんなに校則に対して厳しい子だったけ?御門ならわからないでもないんだけど」「……さあな。あと、俺を堅物のように言っているが、俺は別に授業中に食ったりしなければ別にいいと思うぞ」意外。御門って案外融通きくんだと感心していたら不機嫌そうに眉根を寄せて私を睥睨してきた。「本当?御門とかサッカー部の人は沢山貰えて大変なんじゃないの?」「そんなことはない。まあ、でもお前は……雅野の言うとおりにした方がいいかもしれないな」「?よくわからない」御門のいう事が難解すぎて、というか言葉が足りなすぎてわからなかった。「まあ、悪いことは言わん。あいつの事を思うのならば、そうしてみろ」とのアドバイスを得たので、もったいないけどそうしてみようかという気になった。



そうして、迎えた下校時刻。いつものように、雅野君は三年の教室にまで迎えに来てくれたけどやや、まだ不機嫌そうに窺えた。「ほら、準備済ませたらさっさと帰りましょうよ」「なんか今日の雅野、辛辣……。いつもは可愛い後輩なのに……。どうしたの?何があったの?」「別に何でもありません」なんでもないって口ではああいっているけれど絶対、嘘だと思う。ポーカーフェイスを崩さないから、嘘をついているという証拠も無いけれど私にはわかる。「何でも無いって言っているでしょう。さあ、帰りますよ」雅野に腕を引かれて、私たちは校舎を出た。私は戸惑いを隠せずにいた。



「で、キャプテンにチョコとか渡したんですか?」帰り道で急にそんなこと言い出すから、びっくりして聞き返してしまった。雅野は随分と歯切れが悪く言いにくそうにしていたが「チョコ……他の奴に渡したんですかって聞いたんです」やっぱり聞いた内容はあまり変わりがなかった。今日は結局御門の案を飲んだから、誰にも渡していない。チョコの入った袋の中身を見せて、証明して苦笑した。「結局誰にも渡していない。雅野にも持ってきたのに、無駄に成っちゃったよ」「!え、お、俺にですか?」「そうだよ。今は、もう学校じゃないからいいよね、どうぞ」そういって袋から雅野に今日学校で渡すはずだったチョコを渡した。雅野は受け取ったけれど、今まで見せたことのような罰の悪そうな顔をしていた。罪悪感があるといった様子だった。



「有難う、ございます。……、」「どうしたの?」返答がないかもしれないと思いながらも、雅野に敢えて聞いてみた。「……ちょっと、嫉妬しただけです。特に駄目キャプテンに渡す所を見たくなかったんです」



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