平良




何だというのだ。人がせっかく、やる気を出したというのに。
「平良君が、遊びに来たわよー。」
…貞か。何しにきたんだろう…。大掃除終ってないのに…。掃除機の音のせいで、チャイムの音も聞こえなかったよ。私が仕方なく玄関先に出て行くとマフラーを巻いた、貞が立っていた。
「……何していたんだ。埃髪についているぞ」
貞が髪の毛についていたそれを取ってくれた。
「有難う、何しにきたの?」
素直に礼を言った後に、本題に入る。すると、貞は顔をしかめた。数秒たった後に、地雷を踏んだと気がついた。
「酷いな……それが、彼氏に言う言葉か。新年だから、一番、最初に俺が会おうと思って」
こんなこというのは、貞くらいなもんだろう。一番、最初に……か。言われて嬉しくないわけではないが……気恥ずかしいのほうが勝っている。



「……そっか……。私、大掃除終ってないんだ……」
貞と、初詣にでも行きたいけど……と付け加えると、貞は明らかに落胆して肩をがっくり落とした。
「そうだったのか……名前らしいけどな……」
「物が捨てられない……どうしたらいいんだろう。どれも必要な気がする。貞から貰ったもの捨てられないし……」
そうなのだ、絶対使わないとわかっていても捨てられないのだ。だから、こんなに異常に時間がかかってしまった。
「……別に俺があげたものは捨ててもいいとおもうけどな」
「え?意外、捨てるなよ!とか言うと思ったけど……」
貞の性格をよく、知っている私は絶対捨てるな!とか恐ろしいこと言い出すと思ったのだけど。
「物はいつか壊れるし……物は金で買えるからな。ま、そう言ってくれるのは嬉しいけどな」
貞は嬉しそうな顔で、私の髪の毛を撫でた。



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