クィール




「私……病気で、実はあと一か月しか……」
そう告げたとき、クィールの大きな目が見開かれ見る見るうちにその目に涙が溜まっていった。あと少しで涙はこぼれてしまいそうだった。勿論、でまかせで大嘘である。



「どうして……どうして、そんな大事なこと黙っていたッポ……。そんな……あと少しで……どうしたら……」
クィールがガバリと私を後ろに押し倒す勢いで抱きついてきた。衝撃が、体に伝わる。こんなに真に受けとられて、泣きつかれるとは……。予想外だった、クィールなら「ふっ、そんな手にはひっかからないッポ」とか言うのかな、ってちょっと思っていた。だって嘘っぽいじゃん。急に一か月とか。いや……世の中にはそういう方もいるから不謹慎かもしれないが。残念ながら私は、元気でぴんぴんしているただの学生だ。



「ご……ごめん、クィール……嘘……なん……だ」
申し訳ない気持ち一杯で、謝るとクィールは顔をあげた。クィールと目があった。目には明らかに怒りが含まれていた。
「ひ、酷いッポ!そんな卑劣な嘘で欺くなんて、名前は何を考えているッポ!本気で心配して損したッポ!」
凄い勢いで私に、そんなことを言ってくる。うん……今回は明らかに私が悪いから、言い返せない……。エイプリルフールなのに……。
「ご、ごめんって……!今日のおやつのプリンあげるから、許してよ。」
「……本当ッポ?それは嘘じゃないッポ?」
クィールの声のトーンがあがった。どうやらプリンに惹かれているらしい。
「本当、本当。だから、ね?」
こくん、と頷いて「やったッポ!今日はプリンが二つッポ!」と小躍りしそうなくらいに喜んでいる。うん、可愛い。もう、嘘はやめよう。可愛い彼女を泣かせて特なんか何一つないもの。


だけど、泣いてくれて嬉しかったよ、クィール。


嘘つき!


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