夏未




普段は何とも無いはずなのに、今日という日が少しだけ切なく感じるのは何故なのだろうか。私の手にはチョコ。しかも手作り……。他の人にあげたチョコよりも時間をかけて作った、本命。だけれど、これを本命としてあげられないのは、私も夏未さんも……女だから。私の気持ちなんて夏未さんは知らないし、夏未さんはきっと円堂君が好き。だけど、女だからこそ、このチョコを「友チョコ」として夏未さんに渡すことができる。何のリスクもなしに。



「夏未さん、友チョコ作ってきたの」
チョコを手渡すと夏未さんは少し照れたように微笑む。他の人にはあまり見せないような表情。そして、夏未さんも袋からチョコの箱を取り出した。
「あら、有難う。私からも名前にあるのよ」
夏未さんからのチョコは高そうだった。きっと、結構いいお値段なのだろう。だけど……何故だか、私は悲しくて仕方なかった。私は笑う。
「有難う、こんな高そうなチョコ貰っちゃっていいのかな……」
夏未さんは「いいのよ」と笑う。



きっと、夏未さんは本命チョコも持ってきているんだろうな。夏未さんのことだから……きっと素直に渡せないのかもしれないけれど……夏未さんの本命チョコを貰うであろう彼に嫉妬を覚える。あぁ、私も……男だったらよかったのに。



バレンタインを貴女に!



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