鍾会




トリップ主と鍾会とクリスマスの話


この時代にはクリスマスなんて、一大イベントは無いらしい。かわりと言っては何だが、雪がチラチラ視界を邪魔するくらいだ。カレンダーなんてものはないけれど今日がクリスマスか、それに近い日或いは通り過ぎて幾何経ったくらいかというのは予測できた。「クリスマスかぁ。あーあー、向こうの時代だったらプレゼントとかもらえたのになぁ」あ、もうプレゼントなんていう年じゃないかと思ったけれどもう遅かった、聞きつけた鍾会が興味深々に「プレゼントとは、確か贈り物の事だったね」なんて得意げな顔で言うものだからそうだと頷いておいた。



「ところで、くりすますとはなんだ?」「クリスマスって言うのは……」ふむふむと貪欲に頭にその知識を叩き込もうとする鍾会に悪戯心が芽生えた。プライドが高くて野心に満ちていていつもいつも、偉そうで私を馬鹿にして、トウ艾さんを困らせる鍾会。此処は一つ嘘の知識を混ぜてやれと思ったのだ。「えーと、……空飛ぶ角の生えた猛獣を何体もひきつれ、血に染められた真っ赤な服を着た白髪のおじいさんが、一日で三国を駆け廻り子供たちの居る部屋に音も無く侵入して、いい子にだけ贈り物を置いていくという不思議なイベントなんだよ」凄く脚色した話だが要するにトナカイに乗った、愉快なおじいさんがプレゼントを配る日である。若しくは恋人がサンタクロース。「!?な、なんだその恐ろしい話は!そ、そんなものが貴様の時代では起こっていたのか?!わ、悪い奴はどうなるのだ!」「さあ……?」含みがかったように私は笑むと、鍾会はにわかに信じられんと言ったように口元に手の甲を寄せて、少し震えていた。日頃の行いの悪さを今、悔い改めているらしい。



「あれ、若しかして鍾会、怖いの?」「なっ!そ、そんなわけないだろう!」「因みにそのおじいさんの名前はサンタクロースです」「な、名前も恐ろしい気がしてきたぞ……」物はとらえようですな。私にとっては素敵な名前に聞こえるのだけど、カタカナのそれはなじみが薄いようで恐ろしい人名に聞こえるようだった。「こんばんは、戸締りと兵の見回りの強化をせねば……」どうやら本気でサンタクロースを恐れているようである。これは中々見られない光景で愉快だなと、そろそろネタばらしをしてやろうとしたところで鍾会がある提案をしてきた。



「お、おい、お前。こんばん、私の部屋に来ないか?」「なんだ童貞、夜の遊興は興味がないないんだろう?」「ど、っ……!ち、違う!未来から来たという貴様に万が一のことがあったら大変なので私が、警護してやると言っているんだ有難く思え!」動揺したように捲し立ててそれから、早く来いとまだ真昼間で、丁度頭上にある太陽にさようならを告げた。どうせ、サンタが万が一にでも来たら大変だから私を盾にする気だろうと思ったが、この時代に居るわけも無いので何も言わなかった。



「お、おい。私から離れるなよ!き、危険だからな!」寝台は無駄に広かった。偉い人って言うのはこういう所にもお金をかけられていいなぁーと羨ましがりながら寝台に寝転がった。しかし、女性と寝るわけでもないのに無駄な大きさだなとも思った。しかも広いのに無駄に鍾会が密着して来る。離れろって言ったが警護が私の今日の任務だとか、トウ艾さんの台詞を半分ぱくって離れたがらなかった。


それから、暫くの間サンタ避けに私を隣に寝かせ無駄に密着した。言わなければよかった。


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