神様の宝石



(・エンパ設定で君主夢主、その部下の諸葛誕)


不意に声をかけられた。どうやら何度も声をかけられていたらしかったが、全く存在にすら気が付かなかったのだから、悪い事をしてしまったな、とぼんやりと思った。直ぐに王に相応しい顔をして「諸葛誕どうしたの」「はっ、指示の通り民に食料を配って参りました」そういう諸葛誕は、ピシリと微動だにせず顔を下に向けたまま礼をしている。敬われているのはわかるのだが、どうも諸葛誕の場合は行き過ぎた傾向にあり、崇拝されていると言っても過言ではないのだが、どうしたもんか。まぁ、軽んじられるよりもいいか、と自身を納得させた。「そう。良かった、民無くして、国は成り立たない。わかっているね、諸葛誕」「はい、存じております」民無くして国は成り立たない。そう掲げている私の国。お陰様で民からの信頼は厚く、戦にも率先して協力をしてくれる。



最初は、女の君主なんて、と民も思ったのだろう。皆から軽んじられた。将兵らも、前の父上の事を忘れられないようだった。諸葛誕、……この男ただ一人が私を支えてくれた。女だとか関係なしに、信頼を寄せ、狗の様にただ只管に忠実に与えられた任務をこなしていった。私も諸葛誕に信頼を寄せるのには時間は然程かからなかった。女の君主はこの三国中を見渡しても私一人だけだ。だから、矢張り馬鹿にされたり、色々酷い取引も持ちかけられたが、全て跳ねのけてきた。民が幸せでない国は、君主だって、幸せではない。それが信条だった。だが、問題は今それではなかった。いや、問題は色々山積みなのだが、ある一つが特に面倒くさかった。



「諸葛誕、私……、」「はい」「いや、何でもない……」まさか切り出せまい。様々な男性から、そろそろ婚儀を結んで次代に繋げなければいけないのではないかと迫られている事等。ましてや、諸葛誕にはきっと関係ない。……。「はぁ……」重々しい溜息を吐いた。他の国からも婚儀の話は舞い込んでくる。そうだ、私は適齢期と言う奴で、女として最も輝かしい日を生きているのだ。だが、私は乗り気ではなかった。確かに、此処で意固地に成って婚儀を結ばないなどと駄々をこねていれば、国は亡びるか、或いは信頼できる誰かに……諸葛誕に譲ってもいい。そう思っていた。……そうするか?ずっと思い悩んでいたが、明け渡すのもありかもしれない。不意にそう思い「諸葛誕、人払いを」「はっ」短く了承の意を唱え。少ししてから人は居なく成り人払いが行われた。



「諸葛誕も、若しかしたら知っているかもしれないが、今、様々な男性から婚儀を結んで次代に繋げろと言われている。確かに、私が此処で誰とも婚儀を結ばねば、私の血は絶え、国は亡びるか他の者に明け渡すことに成る」「成りません!他の者に明け渡す等!」諸葛誕は目の色を変えて、それだけは成りません。国を背負って行けるのは忠誠を誓った名前様お一人だけです。と真摯な眼差しを向けられて言われてしまった。「……まぁ、そう取り乱さないで。で、明け渡すのは、諸葛誕、君に明け渡したいの。信頼できるし、何より、私の掲げている信条を絶対に諸葛誕ならば裏切らない。そう信じているから」「勿体ないお言葉、しかし、私等には国を治めるなど到底できませぬ」「はぁ……では、諸葛誕、君は私が好きでもない男に嫁いでも良いと言っているのかい?」ため息交じりに言えば「決してそんなことは!」と焦ったような声色で言った。



「……、じゃぁ、打開策を考えてよ。私は男じゃないから沢山妾とか作っても産むのが私だからね、男とは違うんだよその辺が」女君主のつきあたる壁と言った所か。手を遊ばせながら、困ったように眉を下げた。「……、好いているお相手は居るのですか?」諸葛誕が恐々と言った様子で、窺ってきたので私は一度だけ頷いて「まぁね。居るには居るんだけど」と言うと「ならば、その殿方に……「諸葛誕、君を愛している」私の精一杯の愛の告白だった。それまで顔色を悪くしていた諸葛誕の顔色が一気に紅潮して、耳まで赤くした諸葛誕が「それは本気で言っておりますか?」と尋ねてきたので「うん」と答えた。その反応がまるで、私の事を梳いてくれているように見えて、私はなんだかふわふわ雲の上、夢心地だった。



「私も……その身分違いだとは、存じておりますが、名前様をす、好いております」諸葛誕がなけなしの勇気を振り絞ったように言葉を絞り出した。「有難う。じゃあ、まずは名前様から卒業だね?私の夫に成るんだもの」「へ、え?!」「婚儀は早い方が良い、妾は作らないから、君一人を一生愛して、傍に居るよ。ね、私と一緒に民無くして作れない尊い国を作ろう」私の夢を託せる相手はずっと傍に居て私を支えてくれた諸葛誕、君しかあり得ないんだよ。他の男など、後から諸葛誕を倣って私を支えてくれたに過ぎない。だから、本当に大事な人だという事を理解していた。「名前、殿……」やっぱり、呼び捨てには出来ないようだが、まぁ、合格と言った所だろう。「さぁ、人を呼んできて、婚儀は早ければ早い方が良い。これで煩い連中も黙るだろう。何より、諸葛誕。相手が君だと知ればきっと他の男も口を噤むさ」このお話は終わりと私のバクバクと未だに煩い心臓を黙らせるようにパンと一度手を叩いて強引にお話を終わらせた。これから、私達の関係は変わるけれど、いつまでも共に居よう、諸葛誕。愛している、君だけを。


Title 約30の嘘

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