天使たちの頬を濡らす



(・ベータも夢主も病んでる(ベータが夢主を病ませた設定でも可)が本人たちは幸せそうな百合夢)
(食べ物に血を入れている/自傷あり)


私とベータちゃんの関係は歪だと言う人がいるかもしれない。だけど、私達はこれでいいのだ。幸せなのだ、福音に祝福されて。今日も暗い檻の中で必要最低下の物だけを摂取して、ベータちゃんの帰りを待つの。シュイーンと音がしてドアが開いた。此処に来るのはベータちゃんだけだ。だって、ベータちゃんの部屋だもの。そしてそれはベータちゃんの今日の仕事或いは任務が終わったことを示しており、ベータちゃんが私の為に作ってくれた食事を持ってきてくれたのだと教えてくれた。「名前、良い子にしていましたか?脱走なんて考えていませんよね?」キィ、鉄格子のドアが開かれた。本当は出ようと思えば出られるのだろうけれど私はそれをしない。ベータちゃんの激しい束縛に拮抗されたままだ。「そんなわけないじゃない。私はベータちゃんが居ないと生きていけないんだよ?そんなことするわけないよ」



そういうとニッコリと暗澹とした暗がりの様な異様な色をした瞳を細めて「そうですよねぇ。名前は私が居ないと死んじゃいますもんねぇ?」って言った。本当に嬉しそうなのに何処かゾクリと背筋を冷たくさせるような何かを含意させていた。最初は拒絶だった。私を好きだという、ベータちゃんから逃げた。怖かったのだ。その光すらも拒絶している、恐ろしい瞳に捕らわれてしまうのが、腕の中に納まってしまえば最後、獲物の私は、パクリ、容赦なく食べられてしまうの。ああ、だけど、迫られているうちに、何だか私は途轍もなくその愛が愛おしく感じたのだ。重たいし歪、だけど、何よりも汚れていなくて、子供の様に無垢な夢を詰め込んでいる。誰だって好きな人を独り占めにしたいよね?私だってそう。



ベータちゃんが、他の男や女と話している姿なんて見たくなくなった。ベータちゃんを意識してからそうなった。だから、私はベータちゃんの「閉じ込めちゃいたいくらい、大好きですよぉ」っていう甘言に乗ったのだ。ベータちゃんは自室に鉄格子を作って、置いた。そこに鍵をつけて私を閉じ込めた。ベータちゃんは「これで、もう名前は誰も瞳に映さないんですね、もう男も女も話しかけてこないんですね!」って酷く興奮したように、言った。私は事実上、失踪した扱いに成っているそうだ。ベータちゃんから聞いた話だけど。多分本当の事だと思う。こんな所で嘘をついても仕方がないから。ベータちゃんの料理は美味しい、けれど、時々血が混じっている時がある。多分、食べさせられている料理全て。



「今日はシチューを作ってみたの」隠す気なんてないのかもしれない。白いそれにポタポタ、血がまだら模様を作っていた。私はベータちゃんが傷つくのが嫌だった。だから、今日は拒絶した。「要らない」「……!」ベータちゃんが固まって、私を恨めし気に睥睨していた。「なんで……なんでなんでなんで!!」下に落下していくシチューとサラダ、それから飲み物。バラバラに散らばって皿は割れた。「俺の事を拒絶する気か?!名前!!今まで食べていてくれたじゃねぇか!!それとも、美味しくないのか?!なあ、答えろよ!名前!!」頭を抱えてぐしゃぐしゃと髪の毛を乱すベータちゃんは美しくて、その光景を見ていたくて意地悪したく成っちゃったけど、それじゃぁ、駄目なのだ。兎に角、自傷はやめさせなければ。



「腕見せて」「!」ベータちゃんの肩が魚の様に跳ねあがった。私は、グイとベータちゃんの腕を引っ張って、見えないように厳重に包帯が巻かれているそれを解いて行った。やっぱり。腕にはビッシリと生々しい傷がついていた。沢山。だから、嫌だったのだ。「ベータちゃんの馬鹿っ……、こんな傷付いたベータちゃん見たくないよっ!お願い、傷つけるのだけはやめて、料理は美味しいけれど、ベータちゃんが傷つくのだけは見たくない!お願い、」私の必死の懇願は届いたのか次第に取り乱していた、ベータちゃんが平静を取り戻していった。「……あはっ、なんだぁ……そんなこと。私の愛なんですもの。それくらい平気、って言いたいけれど、そこまで言うならやめましょう、そんなことしなくても私たちはいつまでも一緒ですものね」



「そうだよ、ベータちゃん。私は一生此処に居てもいいんだから。ベータちゃんと結婚だってするし」「うふふ、将来が楽しみですねぇ」ベータちゃんに笑顔が戻った。この笑顔が大好き。「名前、キス、してもいいですよね?」「うん」そう言って目を素直に閉じれば、キスの雨が降ってきた。最初は瞼、次に頬、鼻のてっぺん。それから最後に唇に、愛おしげに何度も何度も口付けた。「ベータちゃん、大好き」「私は愛していますよ?」それから確認するようにお互いの愛を確認し合うのだ。「あ、そうだ。料理今度は普通のを持ってきますから待っていてくださいね。食べさせてあげます」そう言って出て行ったベータちゃん。ああ、今日もベータちゃんの手から食べ物を摂取するのか。と思うと胸が弾んだ。嬉しいな、いつまでも続けばいいなと暗がりの中でそう思った。ベータちゃん、早く帰ってこないかな。

Title 約30の嘘

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