はじまりは突然、おわりも突然




(・神童で切甘)


神童君と私は幼馴染だ。もっといえば、霧野君も幼馴染だ。本当に小さなころから友達なのだが、私は泣き虫な神童君から目を離せないでいた。これが恋心だと知ったのは、割と最近だったりするのだが、私と神童君が付き合うだとか恋だとか愛だとかいう間柄に成るのは、絶対にありえない事だと思う。霧野君と神童とのなれ初めは、公園で執事に見守られながらサッカーをしている、霧野君と神童君に逢ったことからだった。その時、私にボールがぶつかってしまってワンワン泣いていた所オロオロした霧野君と神童君が「ごめんなさい!」と謝りながら必死にあやしてくれたところからだった。それから、神童君と霧野君とサッカーで遊ぶようになったのだ。



前述したことと何が関係あるかと言うと神童君は財閥の御曹司だが、私は、貧乏な家庭で育ったため教養も何もなく、きっと、神童君クラスに成ると許嫁だって、居るだろう。しかし、仲が良い事を見た、神童君の両親は特別に私を神童君のメイドさんにしてくれたのだ。勿論お金は貰っている。お小遣いと言うレベルではないレベルでだ。お陰で家は大助かり、神童君のうちには足を向けて眠れないそんな状況だ。今日も神童君の家で紅茶を入れて、神童君の部屋に運んだり、神童君の猫ちゃんに餌をあげたり遊んだり、部屋の掃除もしたっけ。兎に角、釣り合わないのだ。



だから、この想いを封印することにしたのだ。「神童君のピアノ弾いている姿は本当に格好いいよね。昔の泣き虫神童君とは思えない」「それを言ったら名前だって、最初逢った時は泣いていたぞ」神童君の痛い指摘に額に手を当ててそうだったねと言った。それから、ピアノの鍵盤を指で軽やかに叩き始めた。私が居る時にいつも弾いている曲だった。それに聞き惚れながら私はお掃除の続きに取り掛かる。いつだって、この曲は私の心を震わせる。まるで、想いが溢れ返るような、気持ちに成るのだ。むせ返るほどに。お掃除が終わって休憩の時間に入ると神童君がソファーに座る様に促したので、私は従う。



「神童君ってさ、やっぱり許嫁とか居るの?」気に成っていたこと。私の恋にバイバイって告げるためにしている、自殺願望。居たらいいのに、どうせ叶わない恋ならば、せめて、神童君が幸せに成ることを此処から祈っているよ。神童君は難しそうな顔をしていてまるで、哲学者の様に眉間に皺を寄せていた。それから、やがて、暫くの時間をかけて、重たい口を開いた。「ああ、居る」ほらね、私は何だか予想通りの答えにカラカラ笑ってしまった。大丈夫、最初からわかっていたことじゃないか。釣り合わない、メイドの私と神童君が付き合うとか恋仲とか。そんなの無理に決まっていたのだ。



だが、次に出てきた言葉は許嫁に対して否定的な物だった。「俺は、許嫁を拒絶しているんだ」「なんで?」きっと許嫁は神童君に見合うお金があって美人さんなんだろう。なのに、なんで?と再度尋ねれば「好きな子が居るんだ」と告げた。ああ、どちらにせよ、私じゃないなと思い。「それって誰?」「わかっていていっているのか?」と泣きそうな程に目に涙を溜めて私を見つめていた。「わからないよ」「俺の好きな子は、俺の専属のメイドをやっていて、昔から俺と一緒に居る奴なんだ」「え、」言葉と時間が微量一瞬だけ息をするのをやめた。世界の鼓動を感じる。いや、これは私の鼓動だ。



自惚れでなければ、それは。「名前が好きなんだ。ああ、もう、名前はそう思っていないだろうけれど」「違う!それは違う、……釣り合わないから」そう言って憮然と俯いた。神童君はゆっくり顔をあげさせて呟いた。「釣り合うとか釣りわないとかで、恋や愛まで否定できるのならばどれだけ幸せだっただろうな。俺は名前が、好きだ」そう言われた瞬間私の息は一瞬止まった。「う、そ……」「答えを聞かせてくれ。応え次第では俺は好きに成って貰えるように努力するし、それに両親も説得する」私は言っていい物なのか言い淀んで「すきじゃ、ないよ……」と言った。瞬間ぽろぽろ涙が零れてった。ああ、私はこれに弱いのに。「……っ、何処が駄目なんだ?」「ごめん、泣かないで、好き、好きなの!でも駄目なの!」「そんなことはない!」言い合いに成った。「名前は名前だ。家でもメイドでも何でもない」その言葉に遂に私はうなずかざるを得なかった。



「そういえば、いつも弾いている曲って何なの?」涙で泣き腫らした、瞼は明日腫れちゃうだろうなぁ、とか余計な事を考えながら冷やしていたら、神童君は笑って言った。「これは……少し恥ずかしいな」いつも譜面すら見ないで弾いているので気に成っていたのだが、神童君は照れたようにはにかむばかりだ。それから少しして飲み物を口にしてから喉を鳴らして「あれは、名前を想って俺が作ったんだ。少しでも想いが届けばいいと願って弾いていた」あれは恋の音だったのだ。

Title 彗星

神童なら自作で音楽くらい作っていそうだなーと思って書きました。


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