断罪者は夢を見るか




(・デスタの策略で生贄に選ばれて、魔界もといデスタに嫁ぐお話(策略はデスタの一方的な想いから))


ある時代、ある場所。デスタは珍しく人間の住まう、場所に訪れていた。魔王復活まで時間があり、それを持て余していた。セインとの戦いも熾烈を極めていたが。サッカーバトルなので、命を落とすことも無くただ、お互いが疲弊しているだけだった。カランカラン、真夏日和の今日。涼しい音を運ぶ、店の音にデスタが目を向けた。そこには美しい女がパンや、野菜を詰め込んだバッグを上機嫌そうに、運んでいた。「……」「……」一瞬目があって、女は会釈をした。それから颯爽と、踵を返し家路にまで歩いて行った。「あの女……」欲しい……デスタは心の中でそう思った。だが、手に入れるには、少しだけ手間がかかりそうだった。



デスタは戻ってから、何か思索していた。考えるのは名もわからない女の事。名前がわからないと成ると手に入れるのも難しく成ってくる。「うーん。名前聞くべきだったな」と今更ながらに後悔しつつ、また人間界に入り浸る日々。あの女を探して、あの場所に張っていれば、また逢えるだろうという考えで、同じ場所で連日待ち続けた。そして、やってきた待ちわびた日。女がまた買い物に来たのだ。瞬間、悪魔の羽を露出させて「人間、お前は魔王の花嫁に選ばれたのだ」「えっ?!何!?誰か、助けて!」周りは騒然としていた、雑踏、逃げ惑う人々。それまで穏健だった人々が蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。「いやっ!!」



女の声も虚しくデスタに浚われた、女はガクガクと震えていた。「貴方見たことあるわ、前に、あの店の近くに居た男の子よね」「そうだぜ、最近は天使との戦いもだりぃから人間界に入り浸っていたんだ」そのまま横抱きにされたまま、震えている女をあやす様に揺らしながらデモンズゲートを潜った。そこは地面のおうとつがむき出しで悪魔の住処だと言われても女は納得してしまいそうだった。わらわらと女とデスタの周りにデスタの仲間が集まってきた。「もう人間なんて連れてきたの?」「魔王の花嫁?」色々疑問が突き刺さったがデスタが笑った。「俺の花嫁だ」「えっ?」魔王の花嫁じゃなかったの?街の人々の薄情さを思い出すと女は涙が出てきた。



花嫁衣装に身を包んで、動き辛いなと思いながら、デスタの元へ向かった。「デスタ様、花嫁様の準備が整いました」「おう、お疲れ」そう言っていたわりの言葉をかけて、改めて、花嫁としてデスタの物に成る女の名前を聞いた。「女、名を名乗れ。お前の美しい名を聞きたい」「…………名字名前」「名前か、いい名前だ」そう言ってニィと口角を持ち上げてこのまま式場に向かうぞと手を引いた。が、花嫁の衣装では歩きづらそうだったのでデスタが、横抱きにして式場に向かった。人間の真似事等、と思ったがデスタはこの時ばかりは悪くはない。と思った。



ベリアルが式場で珍しく正装をしていて「俺が式を執り行うがいいよね?」「ああ。お前がやるのかベリアル」「まぁな、デスタ。おめでとう」そう言って祝福の言葉をかけるが、名前にとってはめでたくもなんともなかった。悪魔の生贄状態だった。それから、少しして式が始まった。「デスタ、名前を生涯妻とし、愛する?」「勿論だ」「名前、デスタを愛すること出来る」「うぅ……、む、無理」「……しにてぇのか?」デスタがどすの利いた声で脅しかけるとひっと引き攣った声で「あ、愛します」と涙ながらに答えた。名前とデスタはこうして正式に魔王に誓った夫婦と成ったのだ。「デスタ様」「ああ?夫なんだから、貴方〜とかデスタ〜とかあるだろう?」愛おしげに眼を細めて、デスタがほら、何とか言ってみろよ。と脅しかければ「で、デスタ……」と震える美しいソプラノの声色でデスタの名前を呼んだ。それだけでデスタは多幸感に満たされた。



あれから月日は流れた。最初は、ぎこちない夫婦生活を送っていたが歳月が流れ普通の仲のいい夫婦、に見える程度には成った。二人して人間界に行く。「俺たちが出逢ったのはこの店だったな」カランカラン、涼しい音を運んでいる。そこに、目を細めて名前が答えた。「ええ、そうでしたね。最初は目が合っただけでしたね」「あれから、お前を探して此処で張ったんだ。名前すら聞かなかった事後悔したし、後を付ければよかったと思った」「ふふっ、それじゃあ、まるでストーカーですね」ストーカーと言う言葉に若干、へこんだデスタだったが、まぁ、その出会いに感謝している。と破顔して見せた。



「そういえば、夫婦らしいこと、全然していないよな」とデスタが呟くと、そういえば、そうですね。と名前が同意すると「キス、してもいいか?」名前が恥らうように顔を隠したが無駄だった。顔を隠す、手を払って公然の場だと言うのにも関わらず気にしていないと言った様子でちゅ、と触れ合うだけのキスをした。「愛している、お前を初めて見た時からずっと、愛している。その気持ちは変わらない」

Title 箱庭

あとがき
デスタ連載中なので、デスタ来たのが吃驚しました。


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