楽園に君がいてもいなくても




(・鬼道でシチュお任せ)


鬼道君はとても凄い。帝王学を学んでいて、料理もうまいし、勉強も凄くできるしサッカーも出来る。今は雷門イレブンの偵察に忙しいみたいだけれど、あの弱小チームに何が秘められているというのだろう?きっと、鬼道君が偵察に行くくらいなんだから何かあるに決まっている。それにしても、鬼道君はゴーグルをつけていて普段は見えないからわからないけれどルビーの様な、真っ赤な綺麗な瞳には吸い寄せられるような気すらするのだ。要するに私は、身の丈に合わない恋をしているということだ。別に思うだけならタダだし。ジロジロ見るのは鬼道君きっと、気を悪くしているだろうけれども。見るのだって、タダだ。



「えっ、佐久間君?もう一回」「だーかーら。ペンギンの世話をしたいと思うけれど、今日日直と部活と委員会のコンボでとてもじゃないけれど、行けないんだ」それは忙しい。私なら投げ出したくなるな〜なんて思いながらも皇帝ペンギンの世話を任され、鍵を渡されたので、そのまま直行した。鬼道君からの頼みだったら喜んでいくのに、あの眼帯厨二め、と毒づいて、ペンギンの部屋に入った。ペンギンたちは、自由気ままに涼しい空間で戯れていた。私は生臭い魚の入ったバケツを片手に「おーい、可愛いペンギンたち、餌だよ〜」と呼んでみたけれど、自由なペンギンたちは私の呼びかけを無視して寝そべったりテチテチ、よちよち歩きをしながら追いかけっこをしている。きっと普段の餌やりに来る人間じゃないからわからない、或いは警戒しているのだろう。



困ったなぁ。いくら、鬼道君の頼みでは無くて、あの佐久間の頼みだとはいえ、この愛くるしいペンギンたちに餌を与えず飢えさせるのはあまりにも酷と言うものだ。どうしようとだらりと下がったバケツ。その時、ピィー、という口笛?の様なものが聞こえて、その瞬間、夢から醒めた様に、或いは我に返ったかのようにペンギンたちが集まってきた。何でだ?と慌てて振り返ると鬼道君が口角を持ち上げて笑っていて「どうした、ペンギンに餌をやってみろ。可愛いぞ」と言ったので私は夢でも見ているんじゃないの?とか何処か夢心地ふわふわ地に足がつかない感覚のまま、ペンギン一匹一匹に配給していった。鬼道君はその間もずっと、ドアの前で立っていて不敵な笑みを浮かべていた。



「どうだ。可愛いだろう?佐久間が名字に押し付けてきたと聞いて、呆れて来てみたんだ。いくら、忙しいとはいえ、サッカー部以外の人間に任せるなんてあり得ないな」はぁ、と何処か憂いを帯びた溜息を吐いた。「そ、そっか。それで来てくれたんだ。ペンギン全然寄ってきてくれなくて困っていたんだ鬼道君、有難う」「いや、礼を言うのはこちらの方だ。……良ければだが、この後俺の家に来ないか?これの詫びをしたい」そう鬼道君が淡々と言ってきた提案は肩が跳ねるくらいにはパンチがあった。ストレートにそれを食らった私は「いやいや、これくらいで申し訳ないよ」と一度は断ったものの押し切られる形で、部活が終わり次第、帝国学園の門で落ち合おうという事に成った。



パタン。車のドアが閉まる。こんな長い車初めて見た。リムジンって言うんだっけ?毎日これで通学しているのか、と身を固くしていたら「力を抜け。顔が強張っているぞ」と笑われた。どっちかというと庶民の生活を送っている私には刺激が強すぎたようだ。車はゆったりとした速度で移動し、鬼道君の家に付いた。家に着くなり、メイドや執事が出迎えて今日は恋人を連れてきたのですか?なんて無茶苦茶な事を言ってきたが、鬼道君は否定も肯定もしなかった。何それ期待しちゃうんだけど。って、無駄か。なんて自分で突っ込みを入れて、落胆した。鬼道君の部屋に付くと楽に寛いでくれ、今菓子と茶を用意するって言って鬼道君が出て行った。鬼道君の部屋は綺麗にしてあって、埃ひとつなかった。



暫くして戻ってきた鬼道君のおぼんには焼き菓子と、紅茶が乗っかっていていい香りを運んだ。「帝王学で学んだ料理の腕、お前にも一度味わわせてやりたくてな。丁度いい機会だった」そう言われて食べてみてくれと勧められるがままに焼き菓子を口に入れた。サクサクなのに口の中で溶けていく。これが帝王学……!「鬼道君は一人で何でも出来て凄いよ。尊敬しちゃう」「……これくらい、誰でも出来るさ。それよりも、名字は佐久間と仲が良いのか?」佐久間?なんで此処で佐久間の名前が出てきたのか謎だったが「ああ、あの眼帯ペンギン厨二ね……まぁ、友達かな」「そうか……」鬼道君は考える様な仕草をして思案しているようだった。



それから、口から出てきた言葉は驚きを与えてくれた。「佐久間が羨ましいな。俺は友達ですらないと思われているだろうからな」「そ、そんな……」「俺は、ずっと前からお前だけを見ていたぞ名前……」そう言って顎をクイッと持ち上げられた。深紅の瞳とかち合うキスが出来そうな程の距離だった。「好きだ」ああ、もう、人生いつからイージーモードに成ったの?

Title 約30の嘘

あとがき
実はエブリデイ+のお陰で私も一本書いていました。鬼道さん素敵すぎます。


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