アルカイック・スマイル



(風丸×夢主←茜/従弟)


彼女は私の光だった。希望だった。全てだった。私と名前様は従弟同士で。私が初めて名前様に与えられたものはカメラだった。これで好きな物をとってごらん。って言われて、近所の花壇のお花を撮った。ぶれたり、ぼやけたりしていたが、それでも「良くできたね、茜ちゃん」って言って私の頭を撫でてくれたのを覚えている。その繊手が酷く温かかったことも今も鮮明に焼き付いている。思うに、名前様を愛していたのだと思う。幼心に、恋や愛を覚えてしまっていたのだと思う。テレビの中で美しく描かれるそれと似て異なる。私たちは同性だった。それから、名前様は、私より十離れていた。最初はあんな女性に大きくなったら成りたい等と言う綺麗な憧れだった。だけど、カメラを買い与えられた辺りから均衡が崩れ、ああ、愛しているんだ。と気付いてしまったのだった。



元々結ばれるはずもない恋だった。同性の、ましてや子供な私に興味を向けられるはずも無かったのだから。そして、それは来るべくして来た。終止符が打たれる瞬間が来たのだ。元々十離れていた、私と名前様。ならば、結婚をしても可笑しくないと。恋人の一人二人、居ても可笑しくなんか無かったのだと。本当は知っていた。同じ学校に通っていた、風丸さんと付き合っていたこと、それから結婚することも。招待状を受け取った時、ああ、これで漸く終わるんだ。解放されるんだ。と何処か清々した気持ちに成った。「茜ちゃん」相変わらずカメラを片手に、名前様に恭しく挨拶をすれば、名前様が笑った。「まだ、持っていたんだ。嬉しいな、茜ちゃんに初めてあげたカメラだよね」って。



「そうです……ご結婚おめでとうございます。名前さん」そう言うと有難う。って相好を崩して言った。それから、記念に一枚撮っていいですか?と尋ねてからフラッシュをたいて、一枚パシャリ。名前様の姿を収めた。あの頃の様に手ブレ等は無いがどうしてか、その一枚を見るたびに胸が焼け付く様に痛むのだ。それから、名前様を心の外へ追い出したくてしん様を代わりに撮るように成った。パシャパシャ、だけど、ああ、思い知らされるのだ。何を撮っても、綺麗な物で埋め尽くしても。この薄汚れたカメラが、あの頃の激しく燃え盛るような気持ちを。「名前様、」遠くへ行ってしまった名前様が恋しくて恋しくて名前を切なげに呼べば、胸に沁みわたり、何故か悲しく成った。

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